新鮮! 回転すしマーケティング 第2回

コロナ禍で打撃を受けた外食業界だが、回転すしチェーンはいち早く回復に向かった業界だ。回転すし業界の市場シェア、1店舗当たり売上高、利用客の評価、他の外食とのコスト構造の違いなど、ビジュアル資料を基に業界を読み解いていく。

くら寿司とスシローが2021年、渋谷駅前に相次いで出店。渋谷回転すしウォーズが勃発
くら寿司とスシローが2021年、渋谷駅前に相次いで出店。渋谷回転すしウォーズが勃発

 2021年12月1日の水曜午後3時、取材を終えた記者は遅めのランチを取ろうと、回転すしチェーン「スシロー」に向かいがてら、スシローアプリを立ち上げ「来店予約」をタップ。ところが午後3時台というアイドルタイムにもかかわらず予約で満席だ。アプリトップページに戻ると、「平日15時~、黄皿100円(税込100円)が禁断の90円(税込99円)! 12月10日(金)まで」の告知バナーが目に飛び込んできた(※都心型店舗は税込132円が同119円)。

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 この日は断念して2日後、渋谷での取材帰りに立ち寄ると決めて前もってアプリで渋谷駅前店に予約を入れた。21年6月にオープンしたばかりの店舗で、行ってみるとSHIBUYA109目の前のビル。マツモトキヨシが入る雑居ビルを挟んですぐ隣の商業ビルには、21年1月にオープンした「くら寿司」が入っていた。

 くら寿司は、コロナ収束後を見据えた「Beyond コロナへの挑戦」として21年、渋谷の他、西新宿や高田馬場など都心部に6店舗をオープン。スシローも16年に南池袋店を出店して以降、都市型店舗の出店は強化ポイントだった。業界大手の相次ぐ都心進出で、回転すしへの注目度が上がり、競争は激しさを増している。

 割引セール時間帯のスシロー店内はほぼ満席に近く、盛況だった。本稿では回転すしチェーン大手の勢力図や利益構造などをビジュアル図表で示しながら業界の理解を深めていきたい。

 新型コロナウイルス感染拡大局面では、旅行と並んでダメージを受けた外食産業だが、ダメージの度合いは外食のジャンルによって大きく異なる。

回転すし業界の市場規模推移
回転すし業界の市場規模推移
出所:富士経済「外食産業マーケティング便覧」

 調査会社の富士経済(東京・中央)が21年7月にまとめた「外食産業マーケティング便覧2021」によると、回転すしの市場規模はコロナ禍の20年、右肩上がりの成長が途絶えて前年比7.6%減の6194億円と落ち込んだが、21年は出店の拡大やテークアウト・デリバリーの強化で20年比5.8%増の6553億円を見込んでいる。6700億円だった19年比で2.2%減と、ほぼコロナ禍前の水準に戻るという予測だ。

2021年外食ジャンル別市場規模の2年前比
2021年外食ジャンル別市場規模の2年前比
出所:富士経済「外食産業マーケティング便覧」

 他の外食ジャンルに目を向けると、営業規模縮小によるテークアウト・デリバリー需要を一手に引き受けることになったハンバーガー店がコロナ禍前よりも成長した他は、コロナ禍前に戻り切れていない。中華料理や韓国料理などの東洋料理、および喫茶は19年比80%台前半。ファミリーレストランは同80%を切る水準だ。フレンチ、イタリアンなど西洋料理も70%台前半と戻りが鈍い。居酒屋やビアレストラン、焼き鳥・串焼き専門店、カフェバー、スナックなど酒類がメインの料飲店は、職場単位で飲み会をするケースが激減したことから同49.1%と底ばいが続いている。バーガーチェーンの強さは別格としても、このように比較することで回転すし業態の強さが浮かび上がってくる。

 回転すしチェーン大手すべてに行ったことがある人はそう多くないかもしれない。回転すし業界の市場シェアは、以下のような構成になっている。

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