2021/10/17

効果絶大のマルチリンク

e-EAT8やリチウムイオン電池、インバーターに高電圧ケーブルなどPHEV化にともなう追加デバイスは、車体のいろんな場所に分散搭載される。そのために「このクルマの前後重量配分56:44は、ディーゼルエンジン版の61:39、ガソリンエンジン版の約60:40より改善されており、ハンドリングと乗り心地の両面でさらにレベルアップしている」と輸入元のグループPSAジャパンは主張する。今回担当した編集部F君などは、このクルマに乗って開口一番「これは人生最高の乗り心地!」と大感動していたくらいだ。

実際、単純な乗り心地については、もともと素晴らしく快適でヒタリとした接地性が絶品だった従来のC5エアクロスより、よりゆったり重厚になった感はある。PHEV専用の騒音対策が入念なのか、ロードノイズも明らかに静かだ。上下ストロークは相変わらず大きめだが、ロールはあくまで最小限。これだけヘビー級のSUVなのに山坂道でも持てあまさないのだから、そのデキはなるほど悪くない。また、路面の大きな凹凸にズドンと蹴り上げられるようなシーンでも、身体に響くような衝撃を伝えないのは素直に感心する。

ただ、山坂道でちょっとオイタをしようとすると、ガソリンやディーゼルより無理がきかないのは、重量配分うんぬん以前に、やはり1.9t近い絶対的な重量によるものだろう。また、その乗り心地やハンドリングにしても、重量配分以上に実効果を発揮しているのは、リアのマルチリンクサスペンションと思われる。C5エアクロスのPHEVでは3008のそれに続いて、リアサスペンションがベースのトーションビームからマルチリンクに格上げされている。3008では「後軸にモーターを抱える構造上の都合か?」とも思わせたが、それ以前に車重によってリアサスペンションを使い分けるのが、EMP2プラットフォームの設計要件らしい。

リアサスペンションにはマルチリンク式を採用。バンプストップラバーの代わりにセカンダリーダンパーを備えた「プログレッシブハイドローリッククッション」を使うのは純エンジンモデルと同じ。
充電ポートは左のリアフェンダーに付いている。普通充電のみに対応しており、満充電までに要する時間は200V 3kWで5時間、200V 6kWで2時間半。
荷室の容量は後席背もたれを一番後ろにスライドさせた場合が460リッターで、一番前にした場合が600リッター。駆動用バッテリーを積んだ分だけ純エンジン車(580~670リッター)よりも狭くなっている。
荷室の床下には充電ケーブルの収納スペースが用意されている。

価格差をどう見るか?

C5エアクロスPHEVのプラグイン機能は3008やDS 7のPHEVと同様に、日本の急速充電には非対応の普通充電のみとなる。満充電での最大EV走行距離は65km(WLTCモード)というが、今回の総走行距離からEV走行距離を引いた分、つまり通常のハイブリッド車としてガソリンを使った走行分のみに着目すると、燃費はおよそ11.3km/リッター。以前に同じような乗りかたをしたガソリンやディーゼルと比較すると、その燃費性能はガソリンとディーゼルのちょうど中間というイメージだ。

で、このクルマはディーゼルに用意される「ナッパレザーパッケージ」相当の装備内容で、本体価格は550万円。同等装備のディーゼルとの価格差は74万円だが、PHEVならではの補助金や優遇税制分の22万7000円を差し引くと、実質価格差は51万3000円となる。

乗り心地や静粛性ではなるほど優位にあるPHEVだが、動力性能やハンドリングなどの純粋な“乗り味”だけでいうと、リアのマルチリンクに後ろ髪をひかれつつも、さすがに50万円強という付加価値は見いだしにくい……というのが、自家用車を賃貸駐車場に保管している筆者個人の偽らざる気持ちである。

ただ、200V電源を引き込んだ自宅ガレージをお持ちなら、PHEVへの評価はがらりと変わるだろう。休日の遠出以外は“ほぼガソリンスタンド不要生活”となるPHEV生活を一度でも謳歌してしまうと、普通のエンジン車には戻れない……と経験者が口をそろえるのは本当である。そういう向きは、50万円程度のエクストラコストや、重量増による多少のハンドリングの悪化などはまったく意にも介さず、PHEVを選ぶはずだ。PHEVとは現状ではそういうクルマであり、C5エアクロスはその典型的な一台かもしれない。

(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

200V電源を引き込んだ自宅ガレージを持つ人が所有すれば、プラグインハイブリッド車の持ち味を最大限に発揮できるだろう。
日本のカーオーディオブランドであるビーウィズのプレミアムスピーカーセットは13万2000円のオプション。
リアゲートに貼られた「hybrid」のバッジ。
■テスト車のデータ
シトロエンC5エアクロスSUVプラグインハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4500×1850×1710mm
ホイールベース:2730mm
車重:1860kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:180PS(133kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/3000rpm
モーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-2500rpm
システム最高出力:225PS
システム最大トルク:360N・m
タイヤ:(前)225/55R18 102V/(後)225/55R18 102V(ミシュラン・プライマシー4)
ハイブリッド燃料消費率:16.1km/リッター(WLTCモード)
価格:550万円/テスト車=600万3930円
オプション装備:パールペイント<ブランナクレ>(8万2500円)/バイトーンルーフ(3万0600円)/ナビゲーションシステム(24万8380円)/ETC車載器(1万0450円)/ビーウィズプレミアムスピーカーセット<フロント>(13万2000円)

テスト車の年式:2021年型
テスト開始時の走行距離:2632km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:426.0km
使用燃料:34.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.6km/リッター(満タン法)/12.4km/リッター(車載燃費計計測値)

[webCG 2021年8月7日の記事を再構成]

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