2021/10/17

スポーツモードを賢く使う

……と、ここまでの説明でお気づきの向きもあると思うが、このシステムは発電機を兼ねるモーターを1基しか持たないので、おなじみのトヨタ方式などのように「エンジン発電しながらモーターで走る」という、いわゆるシリーズハイブリッド走行は物理的にできない。DS 7や3008の4WDであれば、実際に“フロントモーターで発電+リアモーターで駆動”というシリーズハイブリッド走行をすることもあるのだが、C5エアクロスPHEVではそのぶん、駆動パターンは少なくなっている。

用意されるドライブモードは「エレクトリック」「ハイブリッド」「スポーツ」の3種類があるが、ハイブリッドモードでもリチウムイオン電池に残量があるうちは基本的にEV走行となり、普通に穏やかに走るかぎりは高速道でもEVのままだ(EV最高速度は135km/h)。またEV優先のエレクトリックモードを選んでいても、従来でいうキックダウンスイッチを作動させる深いアクセルペダル操作をすると、自動的にハイブリッドモードへと切り替わってエンジンが加勢する。このあたりの柔軟性はいかにもPHEVらしい。

残るスポーツモードは完全なエンジン主体となる独特のモードで、アイドルストップすらしなくなり、アクセルの踏み具合によってモーターが加速アシストをする。全体に明らかにパワフルで、パドル変速ではブリッピングまでかまして、エンジン音は高らかに響く。アイシンによると、こうした場合にはATの小気味よさ優先で変速ショックも辞さない。ただ、アクセル操作と加速にわずかな“間”が生じているのも事実で、電動車らしいレスポンスやリニア感が後退するのも事実だ。

スポーツモードは割り切った制御なので、優しい加減速に徹すると、モーターが駆動に駆り出される場面が激減して“電池セーブモード”として裏メニュー的に使える。実際、今回も東京都心から山梨県の河口湖まで、中央高速をスポーツモードのままおとなしく走ったら、メーター内のEV航続距離は1kmも減らなかった。まあ、正式な「セーブ」モードではないので、長く走るうちに少しずつ電池残量は減っていくが、アイデア次第で面白い使いかたもありそうな気はした。

駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は13.2kWh。バッテリーのみでの最大航続可能距離は65.0kmと公表されている。
トランスミッションはアイシン製の「e-EAT8」。エンジンとつながるトルコン部分に駆動用モーターと2組の湿式多板クラッチがレイアウトされている。
軽めの操作感が特徴的なステアリングホイール。リムは上下がへこんだ形状。
ダッシュボードの中央には8インチのタッチスクリーンが備わっている。スマートフォンを接続してマップアプリを使ってもいいし、試乗車のようにナビゲーションを装着してもいい。

変速されるモーター出力

このシステムで興味深いのは、その構造から想像できるように、EV走行時のモーター駆動力も8段ATの変速部分を介していることだ。ほかのEVの例を見ても、このクルマ程度の性能なら変速なしで十分に成立しそうだが、アイシンによると、その構造を利してEV走行時もあえて積極的に変速しているそうだ(ただし、モーターの回転特性から使うのはいくつかの低いギアだけ)。もっとも、実際にC5エアクロスでEV走行しても、見事なまでに、変速の「へ」の字も体感できなかった。

メーター表示上での電池残量が尽きて自動的にハイブリッドモードに移行しても、実際には最低限の電池残量をキープしているようで、交差点などのゼロ発進ではエンジン停止のままモーターで転がり出すケースが多いし、減速時や下り坂では即座にエンジン停止して積極的に回生する。このあたりの走行感覚はいかにも本格的なハイブリッドだ。また、今回でいうと河口湖から帰京する際に走った中央高速上り線のように、効率よく回生できる長い下り坂に遭遇できると、いつしか電池残量が復活してEV走行を再開することもある。

今回のPHEVの車重は同じC5エアクロスの1.6リッターガソリン車より300kg以上、ディーゼル比で200kg弱も重い。360N・mというシステムトルクは、ガソリンより強力だがディーゼルにはゆずる。また、PHEVは電動化に合わせて最終減速比もガソリンよりハイギアード化されている。そんなこんなで、トータルでの動力性能は(それぞれに得手不得手はあっても)1.6リッターガソリン車と同等か、実感としてはそれよりちょい控えめかも……といったレベルである。絶対的に不足はないが、よくも悪くも上品な走りである。

プラグインハイブリッドモデルではナッパレザーシートが標準装備。さらにヒーターやマルチポイントランバーサポートといった機能も備わっている。
リアシートは座面の前後調整と背もたれの角度調整が3座個別でできる。駆動用リチウムイオンバッテリーは座面の下に搭載されている。
パノラミックサンルーフも標準装備。後席の頭上までカバーする大型サイズが自慢だ。
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