アマゾンのリアル店舗の狙いは 「小売業」の王者決戦『アマゾンVSウォルマート』

「フォーチュン500」(米経済誌『フォーチュン』が年に1度発表する企業の総収入ランキング)の全米トップ企業をご存じだろうか? 答えは小売りのウォルマートで2020年度の総収入は5591億ドル超だった。これを猛追するのが2位アマゾン・ドット・コムの3860億ドル超だ。

小売2社がトップを争う形だが、ウォルマートがリアル店舗から始まったのに対し、アマゾンはEC(電子商取引)から始まっている。出自の異なる両社の戦いの最前線では今、何が起きているのだろうか。

本書『アマゾンVSウォルマート』は、小売りの未来を見通すと同時に、アマゾンとウォルマートの戦略を読み解く一冊だ。著者の鈴木敏仁氏は20年以上にわたり米国の流通小売業に関する情報発信を続けている。日本では知名度の高くないウォルマートや「小売業」としてのアマゾンの分析は、30年以上も米国に住んで両社を取材し店舗やサービスを利用してきた著者ならではだろう。

IT活用で成長を続ける米伝統企業

ウォルマートは1962年に創業し、ディスカウントストアやスーパーマーケットなどを展開してきた。テクノロジーの導入に積極的で、77年にはコンピューターを導入。店舗のデジタル化や(あらゆるモノがネットにつながる)IoT技術の活用でも最先端を走ってきた。

91年には各店舗の販売データをサプライヤーがリアルタイムに無料で閲覧できる「リテールリンク」という情報システムを開示した。メーカー、中間流通・卸、小売りを一気通貫で効率化する仕組みは、ウォルマートが成長を続ける原動力になったという。

EC事業にも進出し、品ぞろえやサービス、配送の利便性などでアマゾンと張り合う様子が詳細に紹介されている。米企業といえば巨大IT企業に目が行きがちだが、伝統的企業もITの力で成長を続けていることを見せつけられる。

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業界の垣根を越えた戦い