「できそう」な目標から始める

上司から仕事を任されて「できそうだからやりたい」「できそうにないからやりたくない」と思うのは普通だろう。「できそうかどうか」の切り口によるモチベーションの原理を、本書は「自信説」と総称して解説している。

私のランニングの話に戻る。当初は「毎日3キロ走る」と目標を決めていた。だが、おそらくその時点で、「できそうにない」と心の底で思ってしまっていた。そこで、確実にできそうな距離として目標を「1キロ」に変更した。

さらに気持ちの変化を丁寧に感じるようにしたところ、帰宅して椅子に座った瞬間に走る気がほぼゼロになることに気づいた。対策として、玄関にウエアを置き、帰宅して即座に着替えて外に出たところ、スムーズに走りだせた。1キロという目標も達成でき、その後も難なく続けられている。

モチベーションを高める表面的なハウツーはちまたにあふれているが、むやみに試しても結局自分に合わないことがある。その点、根本的な「仕組み」を理解すると、自分の状態に合わせて、うまくいく可能性が高まるのではないか。世界中の心理学者が蓄積した研究成果が満載の本書から、自分に合ったモチベーションの高め方をぜひ見つけてほしい。

今回の評者 = 若林智紀
情報工場エディター。国際機関勤務の後、人材育成をテーマに起業。その後、ホテル運営企業にて本社人事部門と現場マネジャーを歴任。多岐にわたる業界経験を持つ。千葉県出身。東大卒。

モチべーションの心理学-「やる気」と「意欲」のメカニズム

著者 : 鹿毛 雅治
出版 : 中央公論新社
価格 : 1,100 円(税込み)