ひらめきブックレビュー

対話で家庭を「共同経営」 共働きのライフとキャリア 『仕事も家庭もうまくいく! 共働きのすごい対話術』

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会議の直前に「お子さんが発熱しました」と保育園から電話が入る。慌てて夫に「お迎え、行ける?」と連絡すると「今から商談」とつれない返事。結局、妻は会議をドタキャンして保育園へと向かう。

私自身、何度も頭を抱えたが、共働きの子持ち世帯なら似たような経験はあるはずだ。一方のお迎えが続くと「なんで自分ばかり」と不満がたまり、夫婦仲が険悪になることもある。

こうした共働き家庭の問題を対話で解決する方法を紹介するのが、本書『仕事も家庭もうまくいく! 共働きのすごい対話術』だ。パートナーを家庭の「共同経営者」と考え、お互いのライフとキャリアを充実させる方法を具体的に解説する。著者は家族やパートナーシップに関する課題解決を支援する株式会社すきだよ(東京・豊島)代表のあつたゆか氏。

■互いの価値観を共有

パートナーとの対話を始める前に、家庭に決まった形はないことを共通認識にしておきたい。専業主夫や同性パートナーなど、個人の生き方の多様化と共に、家庭の形も多様化が進んでいる。

その上で、全体的な傾向として国内では共働き世帯が増加しており、最近は専業主婦世帯の2倍を超えている。共働きのパートナーとは、家庭と仕事のバランスの理想、何のために働いているのかといった価値観を共有しておくことが重要という。例えば、自分は「お金」より「自己実現」を優先したいタイプだと伝えておけば、転職を相談した際に「給料が下がる」と伝えても、納得してもらいやすいだろう。

仕事と同様、こまめな情報共有がパートナーとの相互理解につながることもあるようだ。著者はオンラインツールを使ってスケジュールや仕事の進捗などを共有することを勧めている。冒頭の保育園のお迎えであれば、事前にお互いのスケジュールを知っていれば、その日は外部との商談がある夫を優先し、自分の会議を調整するといった判断の助けにもなる。

■「戦略的ご自愛」も必要

「対話」が重要とはいえ、仕事で疲れているのに家庭にまで思考力を割きたくない日もある。そんな時のために、著者は「戦略的ご自愛」を提案する。いわば家庭内の休暇制度だ。相手を気遣う余裕がなくなる前にマッサージに行くなど自分を労わる。帰宅前に「きょうの優しさは売り切れです」などとパートナーに申告しておけば、互いに不快な思いをすることが減る。

本書の魅力の1つは、具体的な言い回しを多く紹介している点だろう。「なんでお皿を洗ってくれないの?」と相手を責めるのではなく、「洗ってくれるとうれしい」と自分を主語にして伝える。あるいは、「家事が負担になっているから、家事代行を頼みたいんだけど、どうかな?」と相談するなど、すぐに使える、角が立たない伝え方や解決策を教えてくれる。

仕事も家庭も、相手を尊重しながら歩み寄ることが重要なのだろう。パートナーとのギスギスしたやりとりに心当たりがある方は、ぜひ本書を参考にしてほしい。

今回の評者 = 前田 真織
2020年から情報工場エディター。08年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

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