――強いマンダムを実現するために何を心がけていますか。
「なんと言っても従業員教育です。昔ながらの集団教育方式には意味がありません。マンダムでは多くの社員が海外の現場に出た経験を持っています」
「一国一城のあるじ」を育成
「現地でゼロから築き上げていくのですから、社員は一国一城のあるじとして自分で考えるしかありません。ハウツーを教えて成果を出させるのではなく、メンター(助言役)としてサポートし、本人に考えさせます。必然的に自律成長ができるような環境を整えるのが経営者の仕事です」

「インドネシアで採用した新入社員は、日本で研修を受けてから現地に配属します。募集要項には『日本で学べる』と明記しました。成績は優秀でも、経済的な理由で留学できなかった有力大学の学生を採用する際のインセンティブになります。生産部門の従業員も定期的に日本の福崎工場(兵庫県福崎町)で研修を受けています」
「一定のスキルを持っているマネジャーには、グローバルなジョブローテーションがあります。シンガポールから日本に来ていた現地採用のマネジャーは、日本よりも向こうにいる時の方が給料のベースが高いのです。国内外で雇用条件が激変していることを痛感しています」
――グローバル企業になると、海外勤務を志望する日本の学生もたくさん来てくれるのではないですか。
「最近、日本の若者は海外志向が弱まっているなどという報道もありますが、アジアへの展開を知ってマンダムに入社してくる若手社員は『海外に挑戦し、成長する機会がほしい』と言います。頼もしい限りです」
「ただ、グローバル展開に着手した時期が早かったので、最近は海外拠点の現地従業員のレベルがかなり上がっています」
「向こうが日本から派遣してほしいのは若いトレーニーではなく、マネジメントができるスペシャリストなのです。ローカライズの進展で日本から送り出したい人と、海外拠点側が受け入れたい人の間でぜいたくなミスマッチが生じているのは悩みですが、実は自慢でもあります」