ひらめきブックレビュー

好奇心が原動力 沖縄の水族館が研究に注力する理由 『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか? サメ博士たちの好奇心まみれな毎日』

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日本動物園水族館協会(JAZA)によると、水族館の社会的役割には、レクリエーション、教育、保全、そして研究の4つがある。ただ、JAZAに加盟する全国140園館は平均で年に1本未満しか論文を発表していない。経営的には水族館にとって研究は必須ではなさそうだ。

ところが、沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館(沖縄県本部町)は2021年時点で全園の約8%を占める232編の論文を発表するほど研究に力を入れている。本書『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか? サメ博士たちの好奇心まみれな毎日』は、同館統括の佐藤圭一氏ら3人のサメ研究者が、なぜ研究に注力するのか、それも「役に立たない」研究をするのかという疑問に、日々の研究の様子などを通じて答えている。

■最も目を引っ込められる脊椎動物

沖縄美ら海水族館が研究に積極的な理由としては、展示を通じて教科書レベル以上の内容を解説しようとしていることに加えて、飼育や観察の記録を論理的にまとめようとしていることなどがある。しかし、これらの理由はいわば建前で、実際は研究者が自らの好奇心によって徹底して追究したいからのようだ。

例えば、著者の1人である冨田武照氏は、人間の健診などにも使うエコーを水中でも使えるように加工した「水中エコー」を使い、エイの眼球の動きを調査。エイが現時点で「最も目を引っ込められる脊椎動物」だと突き止めた。人類には役立ちそうにない研究だが、同氏はその成果に満足げだ。自身の研究を広く知ってほしいと思う一方で、その重要性が他人にわかってたまるかとの複雑な思いがあるようで、「簡単に人の役に立つと思うなよ」と語る。

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