2022/3/20

98年から「鍋島」を売り出した。しばらくは売れず、共同代表を務める妻の理絵さんは「私の経営する調剤薬局の稼ぎで従業員の給料を払っていた」と苦笑する。徐々に口コミで評判となり注文が増えていったが、特約店方式は守り続けた。

飯盛社長は「11年に最高賞を受賞したとき、特約店のみんなが『俺の鍋島が世界一をとった!』と自分のことのように喜んでくれた。よいお店と酒を造り、よいお客とつながったからブームで終わらなかった」と感謝する。佐賀県の4店舗で始まった特約店は現在、27都道府県の107店にまで広がった。

酒造りの成功は地域活性にも一役買う。鍋島の快挙を機に、12年から鹿島市の蔵元などが連携して「鹿島酒蔵ツーリズム」を開始。酒蔵を巡って新酒の試飲を楽しむもので、10万人が訪れる名物イベントに成長した。

富久千代酒造が開設した「御宿 富久千代」のレストラン。限定品の「鍋島」も楽しめる

さらに地域を盛り上げようと富久千代酒造は21年、市内の旧商家を改装したレストラン兼宿泊施設「御宿 富久千代」を開設した。酒蔵が直営する宿は全国でも珍しい。宿泊者は非公開の酒蔵を特別に見学でき、レストランで鍋島と相性の良い日本料理を楽しめる。

活気を支えるため、東京の大学に進学していた飯盛社長の長女、日奈子さんが昨年から同酒造で働く。飯盛社長から「4代目」の期待を受ける日奈子さんは「『鍋島』ブランドをもっと洗練させたい」と意気込んでいる。

(佐賀支局長 諸岡良宣)

[日本経済新聞電子版 2022年3月10日付]