――後継者を育てたいという思いはありますか。

「自分と同じような人間を育てようと思ったことは一度もありません。人間は一人ひとり違うし、同じだと面白くありません。全く別の人材が出てくることを期待しています。今は私の若い頃よりも教育の質が上がっているし、情報もたくさんあります。私が経験したことがない世界をリードしてくれる、新しい時代の人間を育てたいです」

自分の頭で考え、動く

――社会人向けの講義にも力を入れています。

「INIADは学生だけでなく、社会に出た人のリカレント(学び直し)教育も重視しています。企業向けにオーダーメードのリカレント教育など、新しい取り組みにも注力しています。昨年は、学部の卒業生よりもリカレント教育を受講した人数の方が多かったほどです。大学を出てすぐの20代から60代までいて、内容も幅広いんですよ」

――尊敬している人はいますか。

「生きていく上で指針にしたいと思っているのは(東洋大の創立者で明治~大正期の哲学者)井上円了です。全国を回って幅広い人に講義するなどし、現在でいうリカレント教育にも取り組んでいました。『激動の時代にあっても自分の頭で考えなければいけない』という彼の考えは、私の教育方針でもあります」

――INIADは開学から丸5年になります。

「手応えはすごくあります。例えば、新型コロナの東京都の感染者数をオープンデータ化し、サイトで公開しました。するとそれを受けて富山県出身の学生が自主的に富山版のサイトを作り、富山県で正式に採用されたという事例がありました。自分の頭で考え、技術や情報を使って社会の役に立つという、当初から目指していたことを実行する学生が出てきています。こうした取り組みの中から、次世代を担う人材が育っていってほしいです」

(貴田岡祐子)

◇  ◇  ◇

芸術やデザインに関心

先端技術を活用した美術館や博物館のデジタル化を請け負ううち、芸術への関心も持つようになった。これまでに展覧会の企画やキュレーションなどを100件近く手がけており、「趣味が仕事になっている」と笑う。

住宅や建築も好きで、東洋大学情報連携学部のキャンパスの設備にはこだわりを詰めこんだ。デジタル化とペーパーレスを徹底した「本のない図書館」などに特色がある。研究室にある家具も自らデザインしたものだ。

さかむら・けん 1951年東京都生まれ。79年慶大院工学研究科修了。専門はコンピュータアーキテクチャー(電脳建築学)。東大理学部助手だった84年、あらゆるモノがネットにつながるIoTの概念を体現するTRONプロジェクトで世界の注目を集める。2017年から東洋大情報連携学部(INIAD)学部長。
■リーダーを目指すあなたへ
リーダーになれるかどうかは正直結果論です。だからこそ、「生きる」ということを面白がることが大事です。芸術や文化など、人間が営んできた活動に関心を持ち、人生を楽しく生きていきましょう。

[日本経済新聞夕刊 2022年3月10日付]

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