
BMW自慢の直6ディーゼルに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせ、“電動化”された「X5」のエントリーモデルに試乗。ドライビングダイナミクスと燃費効率がいずれも向上したとうたわれるが、果たしてその走りやいかに。
プレミアムSUVブームの火付け役
キャンバスの大きさゆえのデザイン的な自由度の高さや、高いアイポイントがもたらす運転視界の広さ、さらに、ラゲッジスペースを確保しやすいことによる大容量バッテリー搭載時の優位性=電動化のたやすさ、そして何よりも「高価でも売れる」ことによる利益率の高さなどなどから、最近では“売るほう”にも“買うほう”にもこぞって人気なのが、SUVと呼ばれるモデルたち。
そんなSUVに対してSAV(スポーツ・アクティビティー・ビークル)なる造語を当てはめ、「ウチのはそんじょそこらのモノとは違う」と独自性の高さをアピールしたBMWも、結局のところ“そうしたカテゴリー”への依存度を急速に高めたという点では、「同じ穴のむじな」ということか。
実際、最新のラインナップを眺めてみれば、「1」から「7」までのシリーズモデルを隙間なくズラリ並べるにとどまらず、新たなるフラッグシップとなる「8」の設定も確実視され、さらに盤石な構えへと挑む姿勢をあらわにするのがBMW Xシリーズの戦略だ。
ちなみにこのブランドでは、やはり昨今流行のクーペ流儀のルーフラインを備える作品など、より個性的なスタイリングを追求するモデルは、SAC(スポーツ・アクティビティー・クーペ)とまた新たな造語で区別している。
こうして、どのカテゴリーにおいても「ほかと同じはイヤ」と強い自我を通そうとするのは、BMWならではの面白さ。2000年に初代モデルが誕生したX5も、このブランドが「独自のカテゴリー」とうたうSAV/SACの原点という存在である。




48Vマイルドハイブリッドで“電動化”
4代目となる現行X5のデビューは2018年の末で、日本での発売は翌2019年の2月。「となるとマイナーチェンジにはまだ早いし、バリエーションの追加かな?」と、編集部から今回の試乗依頼を受けた時点でそう感じられた最新X5ならではのトピックとは、実は今のご時世の欧州車には「あるある」のネタともいえる、“電動化”というニュースであった。
「BMW X5、X6、X7のディーゼルモデルに、48Vマイルドハイブリッドテクノロジーを搭載」というタイトルで、2021年2月にインポーターから発せられたプレスリリースがそれ。要はそんなニューモデルの登場を見逃していたことが前出の疑問につながったわけだが、内容自体も「搭載テクノロジーは48Vスタータージェネレーターとそれによって発電された電気を蓄積する追加のバッテリーで構成され……エンジンの負荷を軽減するとともに効率を最適化し、燃費はWLTCモードで最大1.1km/リッター向上……」と、モデル紹介を詳しく行うでもなく、いささか淡泊である。
そもそもこれだけではスタータージェネレーターの方式やバッテリーの詳細もわからず、どうにも情報が足りない。それならば……と、実車と対面の後にまず取説のページをめくることから始まったのが、今回のテストドライブだった。ところが、当初救世主と思えたそんな冊子では“世界中のX5”の仕様が取り上げられ、あらゆるオプションの内容にも触れられていて、これがまた何とも複雑で難儀するアイテムだったのだ。誤算である。
それでもハイブリッドシステムのバッテリーが、エンジンルームに向かって右奥のカウル際に搭載されているのを突き止め、そこには「LG Chem Li-Ion Battery 10Ah 440Wh 44V」とデータが記されたシールが貼られていることを発見した。そこでようやくにして、テストドライブへと出発することになったのだった。



