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筑波大学学長 永田恭介氏

筑波大学学長 永田恭介氏

国立大学は今、岐路に立たされている。法人化されて20年近くになるが、研究や教育における国際競争力はじわじわと低下した。国や社会から厳しい目も向けられている。筑波大学学長の永田恭介氏(69)は2019年から国立大学協会(国大協)会長も務め、未来の大学のあり方を追求している。

――86ある国立大を束ねるリーダーとしての心構えは。

「日本はこの20年、30年で経済の力が落ちました。もともと日本の経済は科学技術立国の上に成り立っていたのですから、国や社会が、大学はもっと役に立つものであってほしいと願うのは当然といえます。一方で大学人にとって、その考え方は『安っぽい』。真理探究こそが学問や研究のすべてであって、課題解決に大学が役立つことを目標とするのはおかしい、という思いもあります」

「でもハーバード大学も地元ボストンのため、牧師さんやお医者さん、農学者らを育成し、町が抱える課題を解決していくことを当初、考えていたそうです。日本の大学も多くが教育系、工科系などから始まったのです。もとをたどれば社会の要請に知を尽くして問題を解決することこそが大学の役割で、大学とはこういうものだと伝えていかなければなりません」

「国大協のスローガンは『地域と国の発展を支え、世界をリードする国立大学』です。4代前の会長だった松本紘氏(元京都大学長)の時代につくったものです。当時、筑波大の学長になりたてだった私のアイデアにも耳を傾けてくださいました」

――国は大学の研究力を取り戻すため、総額10兆円を基金とする大学ファンドを創設しました。どう評価しますか。

「よくぞ研究にこれだけのお金を出す気になったね、というのが正直なところです。特色ある大学を支援するため2000億円の基金もできました。これまでの国の支援策を考えると、奇跡のような金額です。政府は久しぶりに本気をみせてくれたということでしょう」

「ここからは国大協として言っていないことになりますが聞いてください。大学ファンドからは、選ばれた大学に運営費交付金に相当する額が分配されます。5、6大学が対象になるといわれていますが、金額が多すぎます。もっと少なくても十分、研究力は向上させられます」

「要は下から全部の実力を底上げしていかないと本当の意味での強化にはなりません。大学ファンドのやり方にはもっと柔軟性を持たせるべきです。大学だけを選ぶのではなく、日本中の研究者がシェアできる形でより効果的に使ってほしい。私立大学も含め、様々な日本の才能をうまく生かすものにしてもらいたいです」

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