2021/12/19

ラバルさんは「足で踏むのには、ちゃんと意味がある」と説明する。機械とは異なり、よく潰れた果実、少し潰れた果実、全く潰れていない果実が混じり合う。発酵過程でこの不均一さが香りを複雑にするという。

足踏み作業は自らやることもあれば、知人に依頼するときもある。「何より面白いしね」と笑う表情からはワイン生産を心から楽しんでいる様子がうかがえる。

ラバルさんは古代からの足踏み製法を守っている

昔からの製法にこだわるだけではない。シャンパン全体の約2割を占めるにすぎない少数派のロゼ・シャンパンを手掛け、新しい可能性を探ろうとしている。

なぜそれが新たな挑戦につながるのか。フランスでは近年、ロゼへの評価が変わりつつあるからだ。「かつては『女性が飲む甘いワイン』という偏ったイメージがあり、格の低いワインと見る人もいた。だが味の複雑さを見直す動きがあり、可能性が広がってきている」(ラバルさん)

赤ワインと白ワインは数千年の歴史の中で、どの料理と合わせるべきかといった認識が広く共有されている。一方でロゼにはそういった固定観念にしばられない強みもある。どの料理を想定して独自の味・香りをつくるかは腕の見せどころだ。

完成したロゼ・シャンパンは落ち着いた淡いピンク色。口に含むと、辛口の味わいの中に軽さと重厚さの両方を感じられた。1本約60ユーロから販売しており、国外でも人気が高まっている。

(パリ支局長 白石透冴)

[日本経済新聞電子版 2021年12月9日付]