肝臓は働き者

肝臓は「代謝の中枢」だと著者はいう。その働きを見ると、糖質、脂質、タンパク質といった人体に欠かせない栄養素の合成、老廃物の排出に関係する尿素の合成、アルコールの処理など多岐にわたる。

他の臓器や細胞への貢献度も高い。例えば、作り出した糖は肝臓自身のエネルギーになるだけでなく、脳や赤血球でも使われる。飢餓時には糖質ではない成分から新しく糖を作り出す。脂質を合成する途中で出る物質が筋肉、腎臓などの栄養源になる。著者が肝臓を「利他的な臓器」と呼ぶのもうなずける。

気になるお酒の影響だが、肝臓でアルコールを分解する際に、アルデヒドという毒物が出る。アルデヒドが多くたまると、肝臓や食道などを傷つけるそうだ。では、何も食べずに飲むとどうなるか。アルコールの分解と脂質を代謝するプロセスは「トレードオフ」の関係にあり、空腹時には脂質を燃やすプロセスの方が進む。すると、血中アルコール濃度は下がらず脳へのダメージが心配される。

食べずに飲み続けていると、肝臓は末梢(まっしょう)の筋肉を材料にして足りないエネルギー(糖質)を補い始めるという。このため、げっそりと不健康に痩せてしまうこともあるのだ。

体の機能維持のために、バランスを取ろうと必死に働いている肝臓の姿が見えてきただろうか。本書を健康を保つ「肝」である肝臓を見つめ直すきっかけにしてほしい。

今回の評者 = 安藤 奈々
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

肝臓のはなし

著者 : 竹原 徹郎
出版 : 中央公論新社
価格 : 902 円(税込み)