おなかにガス、張りや痛み 食事法・上体ひねりで対策
腸内のガスがうまく外に出ていかないと、おなかの張りや痛み、おならに悩まされるようになる。下痢や便秘とも関係してくる。なぜガスがたまってしまうのか。その原因と対策を腸の専門家に聞いた。
腸内にたまるガスとはどういったものか。代表的なのは口からのみ込んだ空気に含まれる窒素ガス、腸内で発生する水素ガスやメタンガスだ。
窒素ガスがたまる原因は無意識に大量の空気をのみ込む「呑気(どんき)症」が考えられる。ストレスや緊張を強く感じる人によくみられる。「腹部膨満外来」を設ける国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の水上健内視鏡部長は「人は緊張すると唾液が出る。それをのみ込むたびに空気も一緒にのんでいる」と説明する。
ストレスを感じる環境から離れた休日はおなかの張りがなく、おならも出ないといった場合、呑気症が疑われるという。十分に睡眠をとり、趣味や運動でストレス解消を図るのが改善への第一歩だ。
一方、腸内で発生するガスには様々な原因が考えられる。便秘が続くと、大腸内でいわゆる悪玉の腸内細菌が増え、ガスが発生しやすい。便秘改善には食物繊維といわれるが、過剰摂取は避けたい。水上部長は「便のカサを増す不溶性食物繊維のとりすぎに注意してほしい。便が詰まりやすくなり、かえって便秘が悪化することもある」と話す。
ガスや便の詰まり対策としては腰を大きく左右にひねる運動がある。ねじれやすい大腸(結腸)のつなぎ目に働きかけ、排出を促す。
食事にも注意したい。人によっては腸内で異常発酵を起こし、ガスを大量発生させる食品がある。発酵性のオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール(糖アルコール)といった英語の頭文字を並べて「FODMAP(フォドマップ)食」と呼ばれている。
例えば発酵性のオリゴ糖を含む小麦やタマネギ、二糖類を含む牛乳やヨーグルト、単糖類のリンゴやハチミツなどがある。水上部長は「これらのうち自分の体に合わない糖質を含む食べ物をとると、消化不良を起こす人がいる。栄養を取り込む小腸でなかなか吸収されず、大腸で腸内細菌に分解される過程でガスが出る」と解説する。
発酵食品、オリゴ糖などは一般に腸によいとされるが、ガスが発生しておなかの張りや痛みが起こるケースがありうるわけだ。腸に不調を抱える人はFODMAPのどれが自分に合わないか調べ、その糖質を制限する食事法を試してみる手がある。
小腸で腸内細菌が急激に増え、ガスが充満する「小腸内細菌増殖症(SIBO=シーボ)」に着目するのは江田クリニック(栃木県栃木市)の江田証院長。「小腸に水素ガスやメタンガスが増えると、下痢や便秘を起こしやすくなる」と強調する。
正常な小腸の場合、腸内細菌は大腸に比べて非常に少なく、ガスもほとんど出ないのだという。江田院長は「SIBOを発症すると腸内に炎症が起き、粘膜が傷ついてしまう。血流によってその影響は全身に及び、様々な病気の引き金になりうることが分かってきた」と警告する。
SIBOの原因のひとつは小腸の収縮運動の機能低下だ。ストレスや不摂生などで自律神経のバランスが乱れると、食べ物の栄養を取り込んだ後の残りが大腸に送られず、小腸に停滞。これをエサに腸内細菌が増殖する。江田院長は「収縮運動はしばらく食べ物を口にしないでいると起こる。小腸の動きをよくするには間食しないことが大切だ」と助言する。またFODMAP食は小腸でも腸内細菌の増殖につながる可能性があるといい、注意を促している。
(ライター 松田 亜希子)
[NIKKEI プラス1 2021年11月6日付]
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