アルゴリズムを使いこなすバランス感覚

本書の立場は明確でシンプルだ。アルゴリズムの出した答えを否定もうのみにもせず、慎重に判断し、うまく役立てるべきだという。乳がんの診断であれば、まずアルゴリズムが大量の情報を選別し、人間が引き継いで判断することで、時間の節約と判断精度の向上を図れると著者は考えている。

いわば人間と機械が共生する未来像だが、アルゴリズムの設計に唯一絶対の正解はない。医療であれば、個人の回復を最優先する、薬剤耐性のような長期的な健康も考える、資源の無駄遣いや治療待ちの他の患者への配慮など広い要素を比較考量する――と様々な立場がありえるので、「どういうときに薬を処方するか」という判断も考え方によって揺れ動く。アルゴリズムの判断にどういう優先順位を組み込むかは、人間社会が引き受けるべき課題だということだ。

アルゴリズムもあくまで一つの技術、手段だと考えれば、使う方法や目的が重要だ。結局はバランス感覚だという主張にAIブームのような高揚感はないが、現在の技術ではこうした中庸の姿勢が現実的な正解なのだろう。

今回の評者 = 戎橋昌之
情報工場エディター。元官僚で、現在は官公庁向けコンサルタントとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。大阪府出身。東大卒。

アルゴリズムの時代 機械が決定する世界をどう生きるか

著者 : ハンナ・フライ
出版 : 文藝春秋
価格 : 1,870 円(税込み)