ひらめきブックレビュー

英国の人気数学者が考える 人間とAI共生の未来像 『アルゴリズムの時代』

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人工知能(AI)が注目を集めた数年前、AIが人間を超える、雇用が奪われるといった議論が盛り上がった。その一方で専門家たちは冷静で、そんな日は当分来ないと指摘していたことをご記憶の方も多いだろう。

イギリスの数学者で、TEDトークで恋愛と数学について語って人気を博したハンナ・フライも、AIの現在地を冷静に見極めようとしている。本書『アルゴリズムの時代』(森嶋マリ訳)は医療現場、警察の捜査、裁判などに進出し始めたAIがどういうアルゴリズム(計算手順)で動いているか、限界はどこにあるかを明らかにする。

■アルゴリズムも人間も、間違う時は間違う

いまやなじみ深い言葉となったアルゴリズムだが、改めてその意味を確認すると、目的をかなえる論理的な手順という曖昧な定義になるそうだ。とはいえ機械が行う手順の大半は、①順位を決める、②カテゴリーに分ける、③つながりを見つける、④重要なものを選び出す、の組み合わせでできているという。

こうした手順を人間の指示どおり行う場合は特に懸念はないが、アルゴリズムが答えにたどり着く機械学習では、重大なエラーも発生している。同時に、人間もエラーを犯すこともアルゴリズムとの比較ではっきりしてきた。

本書に紹介されている検証によると、乳がんの画像診断では、アルゴリズムは小さな腫瘍も見逃さず90パーセント以上の精度で発見するが、人間の病理医は時間をかけても70パーセント程度しか発見できない。ところが、人間の病理医ががん細胞と判断したものはほぼ全て正解なのに対し、アルゴリズムは正常な細胞にまで異常を誤検知する。最新鋭であるほど、"全員を乳がん"と見なす傾向があるという。

アルゴリズムも人間の判断も一長一短であり、アルゴリズムが全能か役立たずか白黒をつけるのは危険だと著者は示唆している。

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