痛む口内炎、ウイルスやカビも原因に 長引く時は注意
口内炎に悩んだ経験はあるだろうか。痛みを伴い、食事もままならない。実は様々な種類があり、疲労やストレスが引き金になる。長引く場合は他の病気が潜む可能性があり、注意が必要だ。
口内炎は舌の縁や唇、ほほの裏など口の中の粘膜に起こる炎症の総称だ。よくみられるのが白っぽい円形の炎症(潰瘍)ができ、周囲が赤くなる「アフタ性」と呼ばれるタイプだ。東京医科大学口腔(こうくう)外科学分野の近津大地主任教授は「疲労やストレスなどで免疫力が落ちたときにできやすい。数や場所、大きさは様々だ。繰り返すケースも多い」と説明する。
合わない義歯や歯のかぶせ物、歯科矯正器具で口の中の粘膜に傷がついたり、自ら唇や舌をかんだりしたのがきっかけになるときもある。物理的な刺激が原因となる「外傷性」(褥瘡(じょくそう)性潰瘍)だ。「アフタ性とは異なり、炎症の境界がはっきりしないのが特徴」と近津主任教授。
高熱や強い痛みを伴う例が多いのが、単純ヘルペスウイルス感染で起こる「ヘルペス性」だ。再発時は口角に水ぶくれができやすい。鶴見大学歯学部付属病院(横浜市)口腔機能診療科の中川洋一・学内教授は「成人の7割が単純ヘルペスウイルスに感染しており、うち1割程度が発症するといわれている」と話す。
主にカビの一種であるカンジダ菌が引き起こす「カンジダ性」は舌に白いコケのようなものができる。しみたり、ヒリヒリと痛んだりする。中川学内教授は「舌の粘膜の炎症が進むと、痛みや味覚障害が残ることがある。広範囲にわたり、2週間以上痛みが続く場合は医療機関を受診してほしい」と促す。
どのタイプも免疫力が低下すると発症しやすい。予防のためにも疲れやストレスをためないよう心がけたい。口の中の衛生状態にも気を配る。近津主任教授は「歯周病対策は口内炎予防につながる。歯ブラシはもちろん、デンタルフロスなども使い、口の中を清潔に保つとよい。喫煙も避けたい」と助言する。
食生活ではビタミンB群やミネラルが不足すると、口内炎が悪化しかねない。バランスの良い食事が大切になる。名古屋市立大学大学院医学研究科の森田明理教授(加齢・環境皮膚科学分野)は「甘いものなどをダラダラと食べ続ける、始終アメをなめているといった行動もよくない」と警鐘を鳴らす。
乳幼児は口内炎の痛みで飲食を嫌がり、脱水を招く例がある。食欲がないときは口内炎がないか確認したい。
口内炎の治療ではステロイドの塗り薬や飲み薬などを使う。市販薬もあり、1~2週間で治る場合がほとんどだ。タイプに合わせ、カンジダ菌が原因ならば抗真菌薬を処方してもらうこともある。
症状が長引くときは注意したい。別の重篤な病気が隠れている可能性があるからだ。森田教授によると、全身に様々な炎症が起こるベーチェット病、自己免疫疾患で目や口の乾燥を伴うシェーグレン症候群、リンパ腫、炎症性腸疾患のほか、最近目立つようになってきた梅毒でも口内炎ができるのだという。
口内炎と見分けがつきにくいのが舌や歯肉、ほほの粘膜といったところにできる口腔がんだ。中川学内教授は「口腔がんの半数以上を占める舌がんは表面が凸凹しており、主に舌の縁にできる。初期は痛みがないため、見過ごされがちだ」と指摘する。
近津主任教授は「がんは出血しやすく、病変部が硬いケースが多い。ただし軟らかくてもステロイド薬などで治らない場合、リスクがある。検査してほしい」と強調する。口内炎が2週間以上続くときは専門医を受診しよう。
(ライター 武田 京子)
[NIKKEI プラス1 2022年2月5日付]
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