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企業の財務諸表に不正や誤りがないかを確認し保証を与える監査法人は「資本市場のゲートキーパー」だ。EY新日本監査法人の片倉正美理事長は「誰もが安心して『おかしい』と言える雰囲気がないと監査は成り立たない」と語る。従業員をより小規模な単位で管理し意思疎通しやすくするなどの組織改革を進めている。

――会計士としてのキャリア形成は順調でしたか。

「頑張って勉強し神頼みもして試験に合格し、ようやく入れた監査法人ですが、当初は気持ちが空回りしました。なぜこの手続きをやるのか分からないことばかりでした。的が外れたことをして、よく怒られました。『これは意味がないんじゃないですか』などと先輩に言っても論破できません。監査ができないと、顧客企業のトイレで泣いていました」

「でも経験を重ねると面白くなってきました。例えば原価計算です。投入した資源量やかかった時間など、何をもとにどう計算したら原価を精緻に把握できるか、会社の人と議論します。工場にいる原価計算が玄人のおじいちゃんと、ああでもない、こうでもない、とやりあうのは楽しかった」

「3年したら独立する予定でしたが、責任ある立場にならないと監査の本当の面白さも怖さも分からないと感じ、やめませんでした」

――顧客だった東芝の会計不正が発覚し、世間からの風当たりが強まりました。

「引責で理事長が英公一さんから辻幸一さんに交代するタイミングで企画担当役員になりました。金融庁からの業務改善命令を実行に移す仕切り役です」

「経営トップだけでなく事業部門のトップともディスカッションすること、気づいたことを必ず書面で提出することなどを指示し徹底させました。形だけにならないよう、ビジネスを理解しきちんと監査することがいかに社会の役に立つかも説明しました」

――監査の質を高めるための組織作りで重視していることは何ですか。

「オープンな雰囲気です。上司でも誰にでも、おかしいと思ったことをおかしいと言えて、皆がそれにきちんと耳を傾ける。こうした『心理的安全性』のある組織風土を醸成しなければ、監査は成り立ちません」

「従来は30~40人規模の『グループ』単位で従業員を管理していましたが、昨年10月から10人規模の『ファミリー』単位に改めました」

「ファミリーのリーダーが所属メンバーの労働負荷や体調を把握し、キャリア相談にものります。新型コロナウイルス禍でリモートワークが広がり、よりコミュニケーションをきめ細かくする必要も感じていました」

EY新日本監査法人理事長 片倉正美氏

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