カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)TSUTAYA DX Company は、全国に散らばる映像・音楽コンテンツなどのレンタル・販売店「TSUTAYA」の収益増を図るため、トレーディングカード(トレカ)の売買を事業の柱の1つに育てようとしている。店舗内へのカードゲーム対戦スペースの設置とユーザー参加大会の多頻度開催で、店舗ごとのコミュニティーを形成。2022年4月時点で100店に達したトレカ取扱店を、25年度中(26年3月末まで)に200店にまで増やし、トレカ市場でさらに大きな存在感を示そうという計画だ。

週末にTSUTAYA西五反田店(東京・品川)で開催されたトレカ対戦ゲーム大会の模様。トレカの種類は「ポケモンカードゲーム」
週末にTSUTAYA西五反田店(東京・品川)で開催されたトレカ対戦ゲーム大会の模様。若い女性や小学生の姿も目に付く。トレカの種類は「ポケモンカードゲーム」

 「1人で10万~20万円、カードの購入につぎ込む顧客もいます。そのため平均すると、映像や音楽、ゲームなどのパッケージ商品のレンタルや販売に比べて、トレーディングカード(トレカ)の客単価は比べものにならないほど高く、店の収益増に大きく貢献しています」

 店頭でのトレカの売買が店にもたらすビジネスの大きさについて、カルチュア・コンビニエンス・クラブ TSUTAYA DX Company TSUTAYA直営部 TSUTAYA西五反田店 店長の富浦健太氏は、こう語る。

不要なカードを売買する中古市場が重要

 トレカとは主に収集や交換を目的としたカードのこと。かつての「プロ野球カード」に代表されるスポーツ選手やアイドル、アニメやゲームのキャラクターなどさまざまな種類のトレカが発行されている。新品は書店や玩具店、専門店などで売られるほか、中古品はリユース店や専門店、それにフリマアプリなどを通して売買されている。こうした収集や交換目的のトレカに加え、対戦ゲームを楽しむために発売されているものもある。最近の人気を押し上げているのは、主に後者だ。

 これらのトレカが店にどのように収益をもたらすのか見てみよう。新品を販売するときは、どのゲームのカードかは分かっても、どんなキャラクターのどの種類のカードかは分からないように袋詰めされた形でメーカーから仕入れ、店が売ることが多い。複数枚を封入して「パック」や「ボックス」などと名付けられているケースもある。販売価格は一応決まっているが、人気によって変わるのが通例。ユーザーがこうした新品を購入すれば、まずは店の収益になる。

 また、上記のように、種類が分からないままカードを購入することが多いので、購入したものの既に手持ちという場合もあり、ユーザーはこうした不要なカードをリユース店や専門店に中古品として買い取ってもらう。対戦ゲームで勝つために必要だったり、そもそもの発行枚数が少なくて希少だったりする人気の高いカードは、高値で売れるため買い取り価格も高く、ユーザーはそこで得た“原資”を元に、自分が対戦ゲームで勝利を収めるために必要なカードを中古品として買う。こうして店は新品販売と中古品売買で収益を上げていく仕組みだ。

TSUTAYA西五反田店のトレカ専用スペース。新品、中古とも大量のトレカを在庫として備え、販売している
TSUTAYA西五反田店のトレカ専用スペース。新品、中古とも大量のトレカを在庫として備え、販売している

 ただし、トレカ目当てのユーザーが、「TSUTAYA店内の他の商材に興味を示し、一緒に購入するケースはそれほど多くない」(富浦氏)。そこでTSUTAYAの場合、店内にトレカ専用のスペースを設け、トレカ単体で確実に収益を稼ぐことを第一に考えているという。

 実際、トレーディングカード市場は拡大を続けている。日本玩具協会が2022年6月に発表した調査によると、「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は、新品の売り上げベースで1782億4900万円に達した。前年度比45.6%増で、過去最高の市場規模である。またCCCによると、トレーディングカードだけを見た場合、新品販売とその3分の1程度の中古売買の市場を合わせ、18年の1000億円規模から22年には2100億円規模に成長したという。

2021年度国内玩具市場規模のうち「カードゲーム、トレーディングカード」(出所/日本玩具協会)
2021年度国内玩具市場規模のうち「カードゲーム、トレーディングカード」(出所/日本玩具協会)

親子2代などユーザー年齢層の拡大が好調の一因

 トレカ市場好調の背景には、3つの要因があるようだ。

 まず、「新型コロナウイルス感染症の拡大で、新しいライフスタイルとして、トレカによる対戦ゲームが見直された」(カルチュア・コンビニエンス・クラブ TSUTAYA DX Company ゲーム・トレカ部 部長 松尾武人氏)。TSUTAYAのように実店舗でカード対戦できる場を設ける店が増え始めていた時期にちょうど重なったため、コロナ禍が収まってきた時期に、実際に出会った人間と対戦できるという要素が、トレカによるカード対戦ゲームの人気を押し上げたわけだ。

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