パナソニックデザインの挑戦 第1回

パナソニックグループが、デザインを切り口に抜本的な企業変革を目指している。独自のデザイン経営を推進することで事業部門長など社員の意識が変わり、デザイン部門ではデザイナーの範囲やデザインの考え方が変わり、商品開発ではデザインやコミュニケーション、ブランディングが変わりつつある。パナソニック ホールディングス社長執行役員グループCEO(最高経営責任者)の楠見雄規氏、同執行役員でパナソニック デザイン本部長の臼井重雄氏にも取材。全12回の特集でパナソニックデザインの挑戦に迫る。

デザインの拠点「Panasonic Design Kyoto」(写真提供/パナソニック)
パナソニックは、「デザイン」で切り口に全社改革を推進。写真はデザインの拠点「Panasonic Design Kyoto」(写真提供/パナソニック)

 国内企業を代表する1社であるパナソニックグループは、国内で初めてインハウスのデザイン部門を設置した企業ともいわれている。それだけデザインの力に着目しており、デザイン部門の出身者がグループを統括するパナソニック ホールディングスの執行役員に就任したほどだ。一方で、業績を見ると予断を許さない状況が続いている。パナソニック ホールディングスが2023年2月2日に発表した23年3月期の業績(連結)見通しによると、売上高は前期比11%増の8兆2000億円。だが純利益は同18%減の2100億円になると予想するなど、下方修正は2度目。それだけ利益面は苦戦が続く。

 そのパナソニックグループが、デザインを切り口に企業変革を目指している。例えば家電などを手がけるパナソニックでは商品のデザインの見直しはもちろん、コミュニケーションやブランディングも強化。すべての顧客接点で統一された世界観を味わえるようにしている。すでに「360UX」(サンロクマルユーエックス)という活動を推進しているほか、23年1月にパナソニック デザイン本部にコミュニケーションデザインセンター(CDC)を設置し、これまで別々だった商品の宣伝や広報などとデザイナーが一緒に動くようにした。

 また「デザイン経営実践プロジェクト」と銘打ち、パナソニック ホールディングスの経営戦略部門が推進母体となって、競争力強化に向けた独自のデザイン経営をグループ全体で開始。長期視点で事業戦略を見ようとしている。これらの活動はパナソニック デザイン本部をはじめ、グループ内のデザイン部門とも連携。企業変革を後押ししている。

図1●パナソニックグループにおけるデザインの体制(2023年2月現在)
図1●パナソニックグループにおけるデザインの体制(2023年2月現在)
(パナソニックの資料を基に編集部で加筆、作成)

自社視点の未来にあらず

 活動の根底にある考え方は「未来起点×人間中心」。10年後を視野に、現状の延長線上や自社視点にとらわれず、実現したい「社会にとって意味のある」という未来を起点に、現状とのギャップを明らかにしながら行動するようにした。人や暮らし、社会、環境の変化を捉えた戦略構築、事業変革を考え、理想の未来に向けた新しい価値を提供できるようにする。サステナビリティー(持続可能性)やウエルビーイング(心身の健康や幸福)も考慮し、未来起点×人間中心のサイクルを回し続けることで、新しい価値を提供できるようにするという。

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