便がうまく出せない、残便感があるなどで腸の病気を疑って受診したら、直腸瘤が見つかることがある。排便障害があれば、治療が必要となる直腸瘤について、正しい知識を得て予防に努めよう。

便秘で悩む人は少なくないが、いきんでも便が出ない、残便感がある際には、時として直腸瘤がその原因となっていることがある。直腸瘤とは、直腸の一部が瘤(こぶ)のように飛び出る現象であり、それ自体が病気というわけではない。しかし、この瘤が大きくなって排便障害が生じるようになれば、治療が必要となる。
東邦大学医療センター大森病院(東京・大田)消化器センター外科診療部長船橋公彦医師によると「身体の構造上、女性に見られる現象であり男性に起きることはまれである。中高年以上に多いが若い人にも見られる」とのこと。
直腸の下部には直腸膨大部という部位がある。この直腸膨大部と膣の間にある直腸膣中隔という組織が何らかの原因で脆弱化すると、直腸の一部がこれを突き破って膣側に飛び出し直腸瘤となる。直腸の内側から見るとポケットのようになっており、そこに便が溜(た)まりがちとなる。
「直腸瘤があっても支障を感じない人もいるが、人によっては便秘がひどくなったり、残便感や膣に物が挟まっているような不快感が生じたりする」と船橋医師。直腸瘤が大きいと、膣に指を入れてそれを押さないかぎり、たまった便が排泄(はいせつ)されない。こうなると手術も検討される。
「直腸瘤ができる原因はひとつに限らず、いくつかの要因が重なっていることが多い」と説明するのは南流山内視鏡おなかクリニックの前田孝文院長。
便秘でいきむことが多かったり、仕事で頻繁に重いものを運んだり、喘息(ぜんそく)や花粉症による頻繁な咳やくしゃみでおなかに力が入るなどして腹圧が高まることが繰り返されたりすると、直腸膣中隔が脆弱化し薄くもなる。また、直腸瘤の出現には閉経後のホルモンバランスの変化や肥満、加齢、出産回数の多さや子宮摘出なども関係している。