ひらめきブックレビュー

逆境の地方銀行の活路は本業集中 金融コンサルが直言 『地銀消滅』

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かねて、地方銀行の苦境が取り沙汰されている。多くの地域で店舗は減少の一途をたどり、希望退職者を募る地銀まで出てきた。地域経済の担い手であり長い業歴を持つ地銀がなぜ、苦境に陥っているのだろうか。

その本質的な要因を探るのが本書『地銀消滅』だ。地銀を取り巻く外部環境を客観的に分析しつつ、地銀不振の本当の理由は、組織の「内部要因」にあると喝破。具体的な銀行名を挙げながら、地銀や金融業界が抱える課題と、ではどのようにして生き残るのかという対応策とを提示している。著者は邦銀や外資系金融機関で信用アナリスト等を経験、その後独立し金融コンサルタントとして活躍する人物だ。

変化は予測できたはずなのに

地銀が置かれている状況は確かに厳しい。まず深刻化する人口減少と空前の金融緩和に伴う低金利を背景に、本業の利ざやを稼ぐ貸し出しビジネスがもうからなくなってきた。さらにデジタル化だ。テクノロジー企業がスマートフォンアプリ、キャッシュレス決済などで銀行業務に進出。今回の新型コロナウイルス禍で、来店する必要のないインターネット銀行やスマホ証券の利便性に多くの顧客が気づいてしまったことも、対面ビジネスを強みとする地銀への逆風となった。

ただし、少なくとも低金利、人口減少は予測できたはずだと著者はくぎをさす。株式会社である地銀は、変化を見据えて価値あるサービスを提供し、株主に還元する収益を確保する義務がある。にもかかわらず、苦境に陥ったのはひとえに「顧客目線・収益目線」に欠けているからだと指摘する。長時間並ぶ窓口や、金利がつかないのも同然の定期預金など、顧客が望む商品やサービスのない地銀は「できれば行きたくない場所」なのだと、その批判は手厳しい。

もちろん地銀も手をこまぬいているわけではない。店舗縮小・人員削減をはじめ、コンサルティングや、地方商社といった金融以外の新規事業を始めている。しかし、著者の視点はこうした努力に対して冷ややかだ。特に業務範囲の拡大には強い懸念を示している。

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