例えば、2021年に会長兼グループCEO(最高経営責任者)が解任された、山口フィナンシャルグループが反面教師として取り上げられている。同グループは19年から飲食店や薬局などを併設した店舗を展開。さらに職業紹介業務といった新規事業を始めたが、外部に発信する開示資料にはそうした利益についてはほとんど触れられていなかったという。これらの事業が足を引っ張っているのは明らかであり、これでは、収益目線の欠如と受け取られても仕方がないだろう。

地銀は原点回帰を

地銀が生き残るためには、本業の金融領域で活路を見いだすべきであるというのが著者の立場だ。近隣の地銀と経営統合を進め商圏を広げる、東京のような都市圏や北海道・沖縄の観光地域での融資を積み重ねる、といった具体的な方向性も示している。

こうした原点回帰の提言は他のビジネスにおいても価値を持つのではないか。本書にある閉塞感に心当たりのある方は金融機関以外でも多いだろう。成熟した産業に関わる人には、ぜひ手に取って頂きたい。

今週の評者 = 鳩山武司
情報工場エディター。金融機関で中間管理職として働く傍ら、書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディターとして活動。茨城県出身。東大卒。

地銀消滅: 顧客・収益目線なきその先には

著者 : 高橋 克英
出版 : 平凡社
価格 : 946 円(税込み)