近年、働き方が多様化している。副業や兼業が増え、仕事で培ったスキルを無償提供するプロボノや週末のボランティア参加なども一般的になった。新卒から定年まで1つの会社で勤めあげる単線の働き方や価値観はいまや当たり前ではない。この傾向はミドルシニア以上の世代も同様で、早期退職や役職定年などを機に元の企業を離れ、様々な分野で力を発揮する人が増えているという。
本書『定年NEXT』は、人生後半のキャリアを充実させる方法を24人の等身大ロールモデルを通じて紹介している。彼らの考え方や行動は、現役世代が長期視点でキャリアを考える際にも貴重なヒントになるだろう。
著者の池口武志氏は一般社団法人定年後研究所理事所長、キャリアコンサルタント。生命保険会社で管理職として多様な職種の人材育成に携わった経験を持つ。
地方と企業を「繋ぐ」
本書に登場する人々に共通するキーワードは、「リエゾン」だ。これは自治体と企業、地域特産品と消費者など、人や社会、組織、モノを繋ぐ架け橋となって価値を生み出す人々だ。
地方と企業のリエゾンとなっている1人が、百瀬伸夫さん(取材当時69歳)だ。電通などで販促や広告のキャリアを積み、ロッテに出向した後、転籍して同社専務まで務め、59歳で独立・起業した。培ったキャリアを生かして地方自治体の支援を手掛け、静岡市の活性化に携わると、地元住民と勉強会を重ね、商店街の店主や客の声を聞くなどして地域との信頼関係を構築した。地元企業と連携して民家や空き倉庫をリノベーションし、旅館やサテライトオフィスを開設。首都圏からの利用者や企業誘致に発展させたという。
豊富な経験や人脈はシニアの強みだ。積み上げてきたそれらの強みを、地方のために還元したいと考える人は多いようだ。
