世界が注目する水素利用
一方、水素の地産地消の取り組みも進む。国内では、横浜市や川崎市の京浜臨海部で、風力発電で水素をつくり燃料電池フォークリフトに供給するシステムがある。山口県周南市のカセイソーダ工場から出る「副生水素」を、道の駅や漁港などの電気や温水利用のために使うなど、意外な場面で進む多様な実証が紹介される。
世界も水素に注目する。欧州諸国では再エネの普及で水素価格が下がり、輸出が検討されている。中国は、北京に水素エネルギーのモデル地区を設置し、国内企業の技術力育成に注力する。未来のエネルギーをめぐる競争は、とっくに始まっているのだ。
水素は、いますぐ普及してカーボンニュートラルを実現するわけではない。本書には、コストの問題やサプライチェーンの構築など、課題もありのままに記されている。現在地がわかるからこそ「水素社会」がもう遠くない未来として感じられる、そんな一冊だ。
今回の評者 = 前田真織
2020年から情報工場エディター。2008年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。
2020年から情報工場エディター。2008年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。