酒造りの探求は今も続く。海外で一般的な長粒種のコメ(群馬県産)で造った酒を21年夏に発売。現代ではホーロー製などのタンクが一般的だが、22年からは地元のスギで造った昔ながらの木桶(おけ)を使い始めた。無農薬米の栽培にも自ら挑戦する。

ワインの世界では有機栽培ブドウを使う「ナチュール」などの概念が定着している。土田酒造は日本酒の世界に伝統的な製法で「自然派」のジャンルを築こうとしているかのようだ。
21年11月下旬、土田酒造は高級ホテルの白井屋ホテル(前橋市)と組んで食事会を初めて開催した。参加者はまず酒蔵を見学し、その後に酒と料理のペアリング(組み合わせ)をホテルで楽しんだ。同社は地域おこしのため地元で酒蔵ツーリズム協議会を設立するなど、以前から見学者を積極的に受け入れてきた。

製法の研究や見学受け入れには、醸造技術や人口減少が進む周辺地域を後世に残したいという土田社長の思いが込められている。「自分たちが楽しみながら、おいしさを追求している姿を次世代にみせたい」としており、今後も新たな酒造りに挑戦していく考えだ。
(前橋支局長 古田博士)
[日本経済新聞電子版 2022年2月3日付]