スパイスで我が家の味アップ 3種で作るチキンカレー
ステイホームの時間が増え、自宅で本格的なカレー作りに挑戦する人が増えている。初心者向けに、複数のスパイスで作るカレーの作り方や生活にスパイスを取り入れる方法を聞いた。
「スパイスの働きは香り付け、色付け、辛み付けの3つ。その配合で個性が出るのがスパイスカレーの楽しさ」。そう話すのは、エスビー食品のスパイス&ハーブマスターの資格を持つ遠藤由美さんだ。同社は初心者向けサイト「はじめよう!スパイスカレー」で、レシピを公開している。
基本のチキンカレーの作り方を教えてもらった。使うスパイスは3種類だけ。主にクミンとコリアンダーが香り、ターメリックが色付けを担う。「スパイスというと辛いイメージが強いが、辛みはスパイスの働きの一部」と遠藤さん。この3つには辛みがないので、出来上がるカレーは子供でも食べられる。「炒めて煮込むだけなので誰でも簡単に挑戦できる」
実際に自宅で挑戦してみた。工程はいたってシンプル。まずは、鶏もも肉とみじん切りにしたタマネギに、3つのスパイスを同量ずつ、さらにおろしニンニクとショウガも加え、炒める。材料がターメリックの黄色に染まり、スパイスの香りが立つ。「タマネギをしっかり炒めることでうまみが出る」というアドバイスに従い、規定の8分間しっかり炒めた。
次いでトマト缶、水、砂糖、塩などを加え、とろみが出るまで煮込めば完成。材料の準備からここまで30分ほどだ。
味見すると、タマネギとトマトのうまみ、スパイスの爽やかさが組み合わさり、炒めて煮ただけとは思えない仕上がりだ。辛みが欲しければ、チリペッパー(赤唐辛子の粉末)を仕上げに入れるとよい。
100種類ものスパイスがそろう上野・アメ横のスパイス専門店、大津屋商店でも、5種類のスパイスをパックにしたカレーセットを扱う。営業部主任の竹内森英さんは「まず基本のセットで試してから、好みに合わせて必要なものを買い足すと無駄がない」と助言。カレーはインド、パキスタン、バングラデシュなど国によってスパイスの配合が全く違う。「各国の味を再現するのも楽しい」
基本ができると、いろいろなスパイスを試してみたくなる。そこで陥りやすい失敗が"オーバースパイス"だ。スパイスの量が少なく感じるかもしれないが、入れ過ぎてはダメ。香りと色、辛みのバランスが崩れるので要注意だ。
せっかくスパイスをそろえるなら、カレー以外の料理にも使いたい。遠藤さんは「特徴をつかめば、応用範囲は広い。ワサビやショウガなどと同じ感覚で使える」と話す。
汎用性が高いのが、カレーの黄色の基になるターメリック。オムレツに少し入れるだけで色が鮮やかになる。炊飯時に入れてターメリックライスにすれば、いつものカレーが手軽にランクアップ。「スパイス同士のつなぎ役にもなるので、炒め物など複数のスパイスを入れるとき使うと味がまとまる」と遠藤さん。
エスニックな香りが特徴のクミンは、ラム肉などとの相性が良い。「肉料理や炒め物などの隠し味に使うと味に深みが出る」(竹内さん)。オススメは、クミンと塩を1対1の割合で混ぜたクミン塩。ゆで卵や卵かけご飯、天ぷらなどにかければ、手軽にエスニックな風味が楽しめる。
コリアンダーはかんきつ系の爽やかな香りが特徴で、減塩料理にも応用できる。「しょうゆや味噌の風味を邪魔しないので和食と相性がいい。減塩に伴う物足りなさを香りが補い、満足感が高まる」(遠藤さん)。エスビーは女子栄養大学の監修で、コリアンダーを使ったキンピラや魚の煮付けなどの減塩レシピも公開している。
ドリンクにも使える。ミルクティーにカルダモン、シナモン、クローブを加えれば本格的なチャイに。牛乳にターメリック、ハチミツを加えて作るゴールデンミルク(ターメリックラテ)は、海外のモデルなどの間で人気が高まっているという。
スパイスの香りや色を長く楽しむためには、保存にも気をつけたい。シンク下やコンロ脇などは避け、冷暗所で保存するのがベストだ。光が当たると退色、熱は香りが飛ぶ原因となる。湿気があると固まり、傷みやすくなる。複雑なスパイスの香りで、いつもの食卓に変化を加えてみよう。
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スパイス求め新大久保へ
東京・新大久保にある通称「イスラム横丁」では、カレー用の食材が安価で手に入るという。スパイス探しを兼ねて訪れてみた。
JR新大久保駅の改札を出てすぐの路地には外国人が多く行き交い、ハラル食材を示す看板が異国の雰囲気を醸し出す。店頭でサモサやチャイを販売する店に入ると、壁一面に袋詰めのスパイスがずらり。
コメや豆、レトルトカレー、ドライフルーツなど、店によって扱う食材は様々。ネパール料理やカレーの店もあるので、買い物がてら小旅行気分が味わえる。
(ライター 李 香)
[NIKKEIプラス1 2021年10月2日付]
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