マグネシウム不足は高血圧も引き起こしやすい。これには同じ必須ミネラルであり、常に相反する働きをするカルシウムとのアンバランスが関係する。五十里教授は「カルシウムは筋肉を収縮させ、マグネシウムは弛緩(しかん)させる。血管を動かす筋肉の細胞内のマグネシウムが不足し、カルシウム過多になると、血管収縮が強まり血圧が上昇してしまう」と説明する。
カルシウム過多・マグネシウム不足はほかにも足がつるこむら返り、メタボリックシンドローム、骨粗しょう症、尿路結石などのリスクになることがわかっている。
カルシウムとマグネシウムをバランスよく摂取することは健康維持にとって非常に重要だ。両者が拮抗することで、体の様々な機能が正常に保たれるようになる。「理想とされる割合はカルシウム2に対しマグネシウム1」と五十里教授。しかしこれまではカルシウムばかりが注目され、多くの人はマグネシウムが足りていない。

そこで、横田客員教授はマグネシウムを多く含む食品の頭文字をつなぎ合わせた標語を考案した(左の図参照)。「『そばのひ孫と孫わ(は)やさしい子かい? 納得』と覚えて、これらの食品を毎日の献立に取り入れてほしい」と勧める。ビタミン、タンパク質、食物繊維なども豊富なものが多い。1食品に偏らず、毎食できるだけ数多く取り入れるのがポイント。相乗効果が期待できる。
(ライター 松田 亜希子)
[NIKKEI プラス1 2022年10月1日付]