失敗の原因分析から「学び」を得る

本書の魅力は、てらいなく語られる失敗談の数々だ。短期的な売り上げ重視に走ったり、値段の割に高級感のないパッケージを使っていたり。ただし、より重要なのは、必ず失敗の原因を分析して「学び」を得たうえ、対策が記されていることだ。

例えば、ベンチャーキャピタルへ出資のお願いに出向いた際、「食品の流通系」の会社は新規上場の際に株価が上がりにくいとされている、という理由で断られた話。著者は、「食品」ではなく、地方と都市部をプラットフォームで結ぶ「IT(情報技術)」の会社と説明していたとしたら、きっと出資を受けられただろうと振り返る。こうした「見せ方」についての学びは、個人向けのサービスを立ち上げた後、「サブスクリプション」などをキーワードにメディアに取り上げられやすい切り口を考える広報戦略にもつながる。

企業向けのサービスがコロナ禍で打撃を受ける中、著者らは、在宅勤務や巣ごもりといった個人需要を味方につけて奮闘している。パン屋から地域を元気にするという一貫した志が、その原動力だろう。「志」あっての起業なのだと、本書にあらためて教えられた。

今回の評者 = 前田真織
2020年から情報工場エディター。2008年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

失敗の9割が新しい経済圏をつくる

著者 : 矢野 健太
出版 : かんき出版
価格 : 1,540 円(税込み)