ひらめきブックレビュー

パンを通じて地域貢献 「失敗」を生かす起業家の挑戦 『失敗の9割が新しい経済圏をつくる』

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ベンチャー企業の経営者といえば、強気で自信に満ちた若者をイメージする。だが、2017年にパンフォーユー(群馬県桐生市)を設立した矢野健太氏は少し違うようだ。失敗を繰り返して右往左往。ときに弱気になるなど、良い意味で庶民派なのだ。

矢野氏が現在、代表を務めるパンフォーユーは、全国にある「地域のパン屋」と、都市部のオフィスや個人消費者をつなぎ、独自技術で冷凍したパンを提供するプラットフォームを運営している。

本書『失敗の9割が新しい経済圏をつくる』は、矢野氏自身が「地域貢献」の志のもと同社を起業し、現在に至るまでを記した書籍だ。ストーリーの面白さに加え、事業提案の留意点、投資家対策、人材採用の考え方など、起業に必須のノウハウがふんだんに盛り込まれており、事業の立ち上げを考える人への絶好の指南書となっている。

■「新しいパンの経済圏」をつくる

著者はまず、パンメーカーと共同出資で会社を立ち上げ、個人消費者向けにオーダーメードパンを提供するパンフォーユーの事業を開始。しかしこれが失敗し、パンメーカーとの契約は解消になってしまう。

いきなりの大ピンチだが、著者はここから、自力でパン事業に再挑戦する道を選ぶ。そして、「残業している社員に配りたい」「契約にきたお客さんに出したい」といった企業の需要を突き止め、パンフォーユーと提携するパン屋のパンを、定期的に企業に納めるビジネスモデルの構築にこぎつけた。著者はこれを、未接続だった需要と供給をつなぐという意味で、「新しいパンの経済圏」と呼ぶ。

パートナーのパン屋探しや人材採用など、その後も苦戦は続く。だが、本書の行間からは、ビジネスが動き出すワクワク感や、パン屋を通じて地域貢献できていることによる充実感が伝わってくる。

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