脱コモディティー化で危機脱したレゴ 改革の軌跡紹介 『レゴ』

日本の製造業を悩ませる課題の一つに、コモディティー化がある。類似品が出回ることにより、価格でしか他との違いを打ち出せなくなる現象だ。その結果、値下げによる消耗戦に陥り、収益が悪化しかねない。

意外に思うかもしれないが、デンマークの玩具メーカー、レゴが、かつてコモディティー化の危機にさらされたことがある。レゴといえば創造力を喚起するユニークな知育玩具「レゴブロック」で知られる。

本書『レゴには、レゴが2度の経営危機を乗り越えた改革の道のりが描かれている。著者はビジネス・ノンフィクションライターの蛯谷敏氏。雑誌『日経ビジネス』の記者・編集者などを経て、現在はビジネス向けSNS(交流サイト)「リンクトイン」の日本市場におけるコンテンツ統括責任者を務める。

自社の価値を「組み立て体験」と再定義

レゴブロックは、モノとしては単純な構造なので、実はコモディティー化しやすい商品だ。1932年創業のレゴは、ブロックのクラッチ構造を特許で保護し、模倣を防いでいた。

ところが80年代後半に各国で特許の有効期限が切れ始める。すると、安価な模倣製品が出回り、98年にレゴは創業以来初の赤字に陥った。その後「脱ブロック」による事業の多角化でいったん息を吹き返すものの、2004年には再び赤字に。

再建は、COO(最高執行責任者)に抜てきされた(後にCEO=最高経営責任者となる)ヨアン・ヴィー・クヌッドストープ氏に任された。彼のリーダーシップのもと、レゴは自社の価値を「ブロックの組み立て体験を提供すること」と再定義。ブロックの製造と販売に経営資源を集中する方針を固めた。

そして考えられたのが、オリジナルの、あるいは「スーパーマリオ」といった既存のストーリーやキャラクターをテーマにブロックを組み立てる喜びをユーザーに与える戦略だった。

さらにヒット商品を継続的に生み出す仕組みとして、「イノベーション・マトリクス」が考案された。製品の企画、開発・製造、マーケティング、収益化といったプロセスごとに、どのようなイノベーションを起こすかを整理したものだ。

次のページ
ファンのアイデアがヒット作を生む