「やり残しのない人生」誓う

「渡米はもう50年以上も前のことになりました。名古屋港から貨物船に乗り込み、夜には船上から満天の星を見ました。何万光年という時間軸の宇宙から見れば、自分は一瞬しか存在しない人間だと感じました。だからこそ『やり残しのない人生にしよう』と誓いました」

――卒業後はイタリア事務機器大手の日本法人、日本オリベッティに就職しました。

「経営を理解するため実力主義の外資系企業を選びました。システム部に配属されたのですが、仕事は営業先の経営を研究することでした。どこに問題があり、解決するには経営システムをどう変えればいいのかを提案するものです。ここで企業経営を徹底的に学ぶことができました」

――91年に日本エム・アンド・エーセンター(現日本M&Aセンター)を創業しました。勝算はありましたか。

「85年に日本オリベッティを退社し、当時お付き合いのあった会計事務所と日本事業承継コンサルタント協会を立ち上げました。会計事務所で働く税理士や公認会計士から『後継者がいなくて困っている中小企業がある』という相談をよく持ちかけられ、これがひとつのヒントになりました」

「90年ごろの出生率は1.4程度で、中小企業の3割に息子がいないのが実態でした。しかも子が全て親の会社を継ぐわけではありません」

――M&Aの仲介という新たな分野にリーダーとして挑むことになったのですね。

「『初心』を試されることになりました。まず誓ったのはステークホルダー(利害関係者)へのお返しです。リスクをとって出資してくれたのですから、報いるのは当然です。91年に会社を立ち上げ、初年度こそ赤字でしたが、2年目以降29期連続で黒字を出しています。年10%の配当を続け、10年間で出資分を無事、返すことができました。リーダーとしての仕事をひとつ、果たせたと思っています」

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中小企業を守る使命感