
東京・東陽町にある菓子店「エクラデジュール」オーナーシェフの中山洋平さんにはバナナを皮ごと使うジャムの作り方を教わった。
皮ごと1センチ角に切ったバナナ500グラムとグラニュー糖300グラム、パッションフルーツのピューレ35グラム(レモン汁でもよい)を鍋に入れ、中火にかける。全体が透明になり、バナナの皮が木べらで簡単に切れるくらいにやわらかくなればできあがりだ。
中山さんは「サステナビリティー(持続可能性)を意識して製造されたチョコレートを使ううち、いつもなら捨ててしまうバナナの皮も使ってみようと思った」と話す。皮を食べるので気になる人は有機栽培のものを使うとよいという。チョコレート90グラムを入れて溶かし混ぜればチョコレートバナナジャムにもなる。
食品宅配のオイシックス・ラ・大地は捨てられてきた食材を活用したチップスの開発などアップサイクルにも力を入れる。担当する三輪千晴さんは家庭でもできるアイデアとして、ブロッコリーの茎を活用した「なんちゃってザーサイ」を勧めてくれた。
まず茎の部分を薄い輪切りにして、電子レンジで加熱する。熱いうちにごま油、鶏ガラスープのもと、ラー油、しょうゆ、塩コショウを加えて味を調える。粗熱がとれたらラップをかけ、しばらくおいてなじませれば完成だ。
同社では東京都内の中学校と組んで、アップサイクル食品の開発を体験してもらう授業を始めている。生徒たちはキノコの石づきや昆布の根元の部分などを使った商品づくりに取り組んでいる。近く販売開始を目指す。
サステイナブル・レストラン協会によると、レストラン業界でもこうした動きは広がっていて、食品ロス削減はもちろん、新たな料理のアイデアを生み出す機会につなげているのだという。家庭でもアップサイクルの発想を食生活に取り入れ、これまで捨てていた食材を新たな視点で見直してみるのはどうだろう。
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企業が開発 手軽に買える品も

アップサイクルを意識した食品を買うこともできるようになってきた。オイシックス・ラ・大地ではナスのヘタなど野菜の切れ端を使ったチップスを販売している。ブロッコリーの茎のチップスでは1商品当たり300グラムの食品ロス削減につながるという。
他にも様々なメーカーや店舗が参入。豆腐づくりでできるおからを使ったレトルトのキーマカレー、残ったパンを利用したビール、ビール醸造後の穀物のかすでつくったパンなどが売られるようになった。市販品も家庭でのアップサイクル料理の参考になりそうだ。
(ライター 松野 玲子)
[NIKKEI プラス1 2022年10月1日付]