「もとの地点に戻る」のが昔話の特徴

本書では他にも、日本の昔話に、主人公が立身出世して幸せに暮らす、といったハッピーエンドが少なく、「もとの地点に戻る」話が多い傾向があることを指摘。例えば「うらしまたろう」は西洋の人から見ると奇異に思えるらしい。竜宮城で太郎がドラゴンと戦うのかと思いきや、飲み食いしてもとの場所に戻るだけだからだ。

著者らは、この「もとの地点に戻る」というのが日本的ウェルビーイングの原型であると仮説を立てる。それ故、旅に出て帰ってくることでウェルビーイングを実感できる、とのことだ。

「今、ここ」に集中する禅やマインドフルネスも、日本的ウェルビーイングに通じるものなのではないか。私も某アイドルグループの「推し」を続けながら、「いる」ことの価値をじっくり考えてみたい。

今週の評者 = 吉川 清史
情報工場SERENDIP編集部チーフエディター。8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」の選書、コンテンツ制作・編集に携わる。大学受験雑誌・書籍の編集者、高等教育専門誌編集長などを経て2007年から現職。東京都出身。早大卒。

むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ

著者 : 石川 善樹、吉田 尚記
出版 : KADOKAWA
価格 : 1,430 円(税込み)