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そういうわけで料理やお菓子作りにみりんやハチミツを使うと、加熱によって焼き色や香ばしいにおいがつきやすくなる。どら焼きはホットケーキに比べて生地が薄く、火が通りやすい。みりんやハチミツを使った方が短時間で焼き色がつくのも都合がよい。砂糖だけで甘みをつけてみると、売られているどら焼きに比べて風味に物足りなさを感じるかもしれない。

ホットケーキはどら焼きと比べて生地が厚いため、火が通りにくい。みりんやハチミツを使うときには焦げてしまわないよう火加減に気を付ける必要がある。どら焼きやホットケーキに限らず、砂糖をみりんやハチミツと置き換えて作る場合には十分注意するようにしてほしい。

どら焼きとホットケーキのもう一つの違いは生地を膨らませるのに使う材料だ。どら焼きには主に重曹を用いる。重曹は炭酸水素ナトリウムという物質。熱を加えると、二酸化炭素(CO2)のガスが生じ、生地を膨らませる。同時にアルカリ性の炭酸ナトリウムができ、結果として小麦粉に含まれるフラボノイド色素を変色させる。それで独特の香りや塩味がつく。

ホットケーキによく使われるベーキングパウダーは重曹に、アルカリ性を中和する酸性剤などを加えている。加熱で生じる炭酸ナトリウムによって生地の色や味が変わるのを防いでいるのだ。

ベーキングパウダーの代わりに重曹とヨーグルトを使うレシピもあるが、これもヨーグルトに含まれている乳酸でアルカリ性を中和し、変色や味の変化を防ぐ狙いがある。

ベーキングパウダーを使った方が生地の色や風味を損なわずに作れるため、ホットケーキや洋菓子にはこちらがよく用いられる。ただどら焼きや甘食などではむしろ、重曹による焼き色や独特の風味が特徴にもなっている。

ベーキングパウダーを使ってどら焼きの皮を作っても、どこか違うように感じるのはそのためだろう。どら焼き作りは重曹を用意してみよう。余力があれば、ベーキングパウダーを使う場合と食べ比べてみるのも面白い。

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表面に絵を描く楽しみも

焼き色のつき方は糖の量によっても変わってくる。糖が多いと焼き色がつきやすく、少ないとつきにくい。これを利用して、ホットケーキやどら焼きの皮に絵を描いてみよう。

まずは砂糖やみりん、ハチミツを入れずに生地を作り、少量を取り分けておく。残った生地には通常通りに甘みをつける。温めたフライパンに無糖の生地でハート形などの絵を先に描き、表面が固まるまで焼く。その上から加糖の生地を流してさらに焼くと、無糖の生地で描いた部分だけが白っぽく焼きあがる。

(科学する料理研究家 平松 サリー)

 [NIKKEI プラス1 2022年4月30日付]