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ITスキルでキャリアアップ テック過渡期の今こそ好機 『Work in Tech!(ワーク・イン・テック!) ユニコーン企業への招待』

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2013年、英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン氏が発表した「世の中の仕事の約半分が人工知能(AI)に奪われる」という予測は、多くの人を震え上がらせた。しかし今、企業はAIをはじめとするテクノロジーの活用を推進している。議論はすでに、AIを敵とみなす段階から、「いかに共存するか」に移っているようだ。

本書『Work in Tech!(ワーク・イン・テック!) ユニコーン企業への招待』は、テクノロジーと共存せざるを得ない状況を受け止めながら、成長領域の仕事に進んで飛び込むことで、スキル向上、年収アップを狙う「新時代のキャリア論」を紹介している。

著者の森山大朗氏は、話題のユニコーン企業(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)を渡り歩いてきた。大学卒業後はリクルートへ入社し、ビズリーチやメルカリを経て、20年から情報・ニュースアプリのスマートニュース(東京・渋谷)でテクニカルプロダクトマネージャーを務めている。

■テクノロジーによる効率化の実現

私たちの働く環境がテクノロジーによって変化したのは言うまでもないだろう。経費精算や給与管理といった、人が紙に数字を書き、電卓で計算していたような作業は、今では多くのソフトウエアによってほぼ自動化されている。

「アドテク(広告)」、「フィンテック(金融)」といった新語も次々と登場。いずれも「○○×テクノロジー」を略したもので、テクノロジーの力を借りて、既存の業務の効率化などを実現するものだ。こうした現状に抗い、従来のアナログな方法に固執すれば、組織も個人も淘汰されると著者は警告する。

■ハイブリッド人材がキャリアの可能性を広げる

テクノロジーで世の中が変わる時代は、ビジネスパーソンのチャンスにもなると著者は説く。年齢や職種、文系・理系に関係なく、テクノロジーとの共存を受け入れることが、キャリアにおけるステップアップの扉を開くのだという。

しかし、テック領域の業務に挑戦したいと思っても、現実的には経験もスキルもない職種への転職は厳しい。それに関しては、こんなメソッドが紹介されている。

メーカーの採用担当者が、テクノロジーを取り入れた仕事ができるようになりたいと考えたとしよう。その際、いきなりエンジニアに転身するのではなく、採用担当という職種のまま転職する。ITやウェブ業界の、少人数ながら成長軌道に乗っている会社を選ぶのがコツだ。その会社で、業務に役立つITスキルを身につけるのである。マクロが使えたり、ちょっとコードが書けたりするだけで、「テクノロジー×採用担当」のハイブリッド人材と評価される可能性が高い。そうなれば、「人事領域のDX推進担当」として元の業界に戻るキャリアも選べるし、人事系のテック企業への転身も視野に入ってくるという。

著者によれば、ユニコーン企業は、事業の成長とともに様々な仕事やポジションが生まれ、チャンスが広がる。スピーディーに激しく物事が変化する時代にキャッチアップするには、テクノロジーの中にチャンスを見つけることが求められるのだろう。

今週の評者 =倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

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