ひらめきブックレビュー

時間をどう有効に使うか 個人のタイプに合わせた技法 『YOUR TIME ユア・タイム』

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現代のビジネスパーソンは忙しい。パソコンやスマートフォンの普及によってどこにいても仕事ができ、人手不足の業界では個人の仕事量も増えがちだ。「もう少し余裕があれば」と誰もが思う時代かもしれない。本書『YOUR TIME ユア・タイム』はそんな人たちへ、科学的見解に基づいて時間を有効に使う実践的な技法を伝授する一冊だ。

著者の鈴木祐氏は科学ジャーナリストで、10万本の科学論文を読破し600人を超える専門家へのインタビューを重ねて執筆や講演を続けている。著書に『最高の体調』『ヤバい集中力』などのベストセラーがある。

■自分の「時間感覚」のタイプを知る

「To Doリスト」や「タイムログ」など、時間術は多くある。これらで効果が出る人もいるのだが、本書によると、万人に効果のある時間術は見つかっていない。なぜなら、「時間感覚」には個体差があるからだ。時間感覚とは、未来、すなわち次に起きる確率が高い変化を「予期」したものと、過去、すなわち前に発生した確率が高い変化を「想起」したものの2つで構成される。自分の時間感覚のタイプを知り、それに適した技法を使って時間感覚を調整することで、時間を有効に使えるようになるという。

本書にある「時間感覚タイプテスト」で、個々人がどのタイプであるのかを調べることができる。予期には「容量超過」「禁欲家」「無気力」「浪費家」の4つ、想起には「自信家」「怖がり」「悲観主義」「楽天家」の4つのタイプがある。

例えば、予期の4タイプのうち、将来のイメージと現在とのつながりを感じにくい一方、やるべきことのイメージがたくさん思い浮かぶタイプは「浪費家」だ。短期のタスクに目が向きやすく、最終的なパフォーマンスが下がる傾向がある。このタイプには、業務を細かく分解する技法が勧められている。「書類作成」であれば、「情報収集(20分)、データ抽出(20分)、骨子の箇条書き(10分)、文章化(30分)」と分解し必要な時間を算出する。これを続ければ、長期課題においても見積もりのゆがみが少なくなるという。

自分のタイプを把握すると、漠然と認識していた弱点部分が明確になる。さらに具体的な策が示されるので行動にも移しやすいだろう。

■「生きがい」で効率の追求から離れる

逆説的だが、著者は「効率の追求が時間不足を起こす」とも指摘している。効率を優先しすぎると切迫感が生まれ、ストレスを引き起こす。著者は対策として、「生きがい」を使う技法を紹介する。生きがいとは、簡単にいえば、モチベーションをかき立て強く没頭できるものだ。生きがいに時間を使うことで効率の追求から離れ、人生の満足度を引き上げられると説く。

本書は、実践的な時間術の技法を紹介しながら「退屈を追い求める」ことの重要性も記す。その効果については本書を読んでいただきたいが、現代は忙しさに紛れ、自分にとって本当に大切なことを見失いやすい。漫然と過ごすのではなく「私の時間」を見つめ直し、自分の生活を組み立て直してみたい。

今回の評者 = 倉澤 順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

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