マスク生活がドライアイの原因に? 目の乾きどう対策
室内外が乾燥しがちな季節は目の乾燥(ドライアイ)が心配だ。最近は新型コロナウイルス感染予防や花粉症対策で手放せないマスクに起因する「マスクドライアイ」を指摘する声もある。注意点をまとめた。
ドライアイは目の表面が乾燥して角膜が傷ついたり、障害が起きたりする病気だ。目の疲れや乾き、ゴロゴロする(異物感)といった症状を伴う。目を保護する涙の量が減る(涙液分泌減少型)、目の表面が水分をはじきやすくなって涙が安定しない(水濡(ぬ)れ性低下型)など、様々なタイプが考えられている。
ドライアイに詳しい伊藤医院(さいたま市)の有田玲子副院長(眼科)は「近年の研究では患者の大半が目に水分補給をしてもその水分を保てず、すぐに蒸発してしまう『涙液蒸発亢進(こうしん)型』であることが明らかになってきた」と説明する。
目に外界の光を取り込んでいる角膜は表面を涙に覆われている。涙は内側から「ムチン層」「水層」「油層」と3層構造になっており、最も外側にある油層が蒸発を防ぐ役割を果たす。まぶたの奥にある「マイボーム腺」と呼ばれる器官がこの油層の油分を分泌している。
有田副院長によると、目の疲れや食生活の偏りによって油分の分泌が減ったり、質が低下したりすると、涙液蒸発亢進型のドライアイになるリスクが高まるという。目薬を差してもすぐ乾くと感じる場合には可能性がある。
中性脂肪やコレステロールの値が高くなる肉類や揚げ物など脂質の多い食事は避けたい。冷え性やストレス、精神疲労もマイボーム腺の働きが低下する要因になりうる。
まつげの生え際にあるマイボーム腺の出口は皮脂やメーク汚れなどで詰まることがある。洗顔の際に指の腹で2~3回、ぬるま湯を使いながらやさしく洗うとよい。アイメークも専用のアイシャンプーを使うなどしてしっかり落とすようにしたい。
パソコンやスマートフォンを長時間見続けるのもリスクだ。涙の分泌を促すまばたきが浅く、少なくなりやすい(まばたき不全)。東邦大学医療センター大森病院眼科の堀裕一教授は「パソコンなどの作業中は1時間ごとに休憩を取ること。エアコンの風が顔や目に当たらないよう調整し、加湿器を使うようにしてほしい」と助言する。
コロナ禍での生活様式の変化を踏まえ、マスクドライアイにも注意を促す。着けているマスクの上部から漏れ出る呼気によって目の表面が乾いてしまう現象だ。カナダ・ウオータールー大学の研究グループが2020年に報告して知られるようになった。「リモートワークによる目の酷使とマスクドライアイが重なると、傷ついた角膜の修復が追いつかない」と堀教授。
原理はマスクをしていて眼鏡がくもるのと似ている。自分の顔の大きさや形に合ったマスクを選び、鼻の部分をしっかり肌に密着させて呼気が漏れないように装着する。
ドライアイ対策では目薬がよく使われる。ただ堀教授は「過度に使うと、逆に目の乾燥を防ぐ機能を低下させかねない。差すのは1回1滴で十分。1日に5~6回を限度にしてほしい」と語る。
有田副院長は「日常生活の中でドライアイ対策はできる」と強調する。ぜひ取り入れてほしいと勧めるのはまぶた付近の筋肉を鍛えて涙の分泌を促すという「まばたきエクササイズ」。蒸しタオルなどでまぶたを温め、マイボーム腺の働きを活発にするのもよいという。
コンタクトレンズの長時間装用や運動不足などもドライアイが進行する原因になりかねない。気になる人は生活習慣から見直していきたい。
(ライター 大谷 新)
[NIKKEI プラス1 2022年2月26日付]
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