温室の暖房費は、冬場の気温にも大きく左右されます。昨年は全国的に暖冬でしたが、今年の冬の寒さがどうなるのか、どの農家さんも気をもんでいます。千葉県市川市で「太田いちご園」を運営する太田裕士さんは暖房機のメンテナンスのほか、ビニールハウスのカーテンを二重から三重にするなどして冷気の浸入を少しでも抑える対策をしています。

パックやセロハンも値上がりしています。おさぜん農園によると、今年9月にビニールや農業用パイプが10%値上がりしました。仕入れ業者からは「来年1月以降にも再度5~10%程度値上げする」という連絡があったそうです。燃料や資材の値上がり対策として、長村さんはイチゴ狩りの入園料やパック販売の値上げを検討しています。

きょうの値段の方程式はこうなります。

イチゴの実質値上げ=生産減+人の手間+原油高

イチゴの値上げは、クリスマスに欠かせないケーキにも影響が出るかもしれません。1パックの減量は業務用でも行われます。製菓店はすでに仕入れる数が決まっているため、原材料価格の上昇分を販売価格に転嫁するかイチゴの個数をちょっぴり減らす可能性があります。

収穫作業に省力化の動き

今後も値上がり傾向は続くのでしょうか。カギとなるのが省力化です。収穫作業の負担を軽減して生産性を高めるため、装置を導入する動きがあります。自動栽培装置は19年に全国で初めて佐賀県で実用化され、導入前に比べ収穫量が増加しました。この装置は横5メートルほどのプランター台が左右に並び、ゆっくり循環します。腰を折り曲げたりひねったりする動きが大幅に減らせるため、働く人の負担が減ります。

通路の確保が必要ないためプランターとプランターの間隔を詰めることができ、従来の1.5倍前後の収量に増やすのも可能ということです。500平方メートル規模の場合、システムだけでおよそ1000万円かかりますが、かかった費用を回収するのは十分可能だということです。

ただイチゴはデリケートな作物なので、パック詰めなど人の手でやる作業はどうしても残ります。コスト面からみるとイチゴ価格は今よりも大幅に下がることはなさそうです。各産地の新ブランドも開発ラッシュです。より高級化が進むのは間違いなさそうです。

(BSテレ東「日経モーニングプラスFT」コメンテーター 村野孝直)

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。