マンション価格がバブル期超え 高騰はどこまで続く?
東京都内のマンション価格が歴史的な高値圏にあります。不動産経済研究所が発表した首都圏の新築マンションの平均価格は、2021年に前の年比2.9%上昇の6260万円とバブル期を超え過去最高を更新しました。特に東京23区では7.5%上昇の8293万円と、30年ぶりに8000万円を突破しています。都内のマンション高騰の理由を探りました。
低金利と中古市場の活況が追い風
主な理由は2つです。まず「低金利」。住宅ローンの金利は1%を切って、0%に近い金利で出している金融機関もあります。マンションは高い買い物ですから住宅ローンを利用する人が多く、ローン金利が低いと購入したい人が増えるのは当然ですよね。需要が増すことによって、価格が高騰しています。
もう一つは中古市場が活況なことです。不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)によりますと、都内の中古マンションの平均価格は2021年に5739万円と前年比11%上昇しています。中古マンションの価格が上昇することによって、新築マンションを将来売ることになっても高く売れるわけです。資産価値が目減りすることへの不安を和らげていて、マンション購入の心理的ハードルを下げています。
今回の値段の方程式です。
さて、どんな人が買っているのでしょうか。
キーワードは「パワーカップル」
東京都江東区有明にある住友不動産の「シティタワーズ東京ベイ」で取材しました。同社の首都圏南第二営業所長の吉野秀邦さんは「やはり共働きの世帯。これがキーワード。世帯年収が1400万円を超えるパワーカップル。よく言われてると思うが、共働きの世帯の方々が非常にけん引している」と説明します。
入居者にも聞いてみました。約9400万円の物件に住む山下さん(仮名)は「前の家が買った値段より2000万円くらい高く売れた。不動産の価値は上がったり下がったりするかもしれませんが半分以下にはならないなと思い、大きな買い物を決断した」と話します。
共働きなら世帯年収が増えます。一般的に都内のマンション価格は「年収の7倍までが適正」とされてきました。仮に夫婦2人の収入を合わせて1400万円ならば7倍すると9800万円となり、より高いマンションを購入できるようになったというわけです。企業の働き方改革が進み、女性も子育てしながら働きやすくなっています。将来にわたって安定した収入が計算できるようになったことも、背景にあります。
そして、長年住んでいた戸建住宅を売却し「ついの棲み家(すみか)」にマンションを選ぶシニア層も増えています。共働き世帯などと並び、マンション購入者層で一定の存在感があります。
では、マンション価格の上昇はいつまで続くのでしょうか。低金利は当分続きそうで、外国人が投資のために海外に比べて割安な日本の物件を購入する意欲は旺盛です。一方、それの受け皿となるプロジェクトの数が非常に少ない状況になっています。バブル期には新興のデベロッパーが多く参入しましたが、当時はマンション完成前に売り切ってしまうスタイルが多かったです。
しかしバブル崩壊後はそういった新興デベロッパーが減り、供給するプレーヤーが減りました。現在は完成したマンションを1期、2期と時期をずらして販売するスタイルが主流です。資金力のある大手しかできない売り方になっています。マンションをめぐる需給環境が変化することは考えにくく、マンション価格の高騰は今後も続きそうです。
(BSテレ東「日経モーニングプラスFT」コメンテーター 村野孝直)
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