高級品需要をけん引する「職」と「食」

もう一つは、高額モデルの売れ行きが好調なことです。コロナ禍で自転車の売れ筋が変化してきました。2015年を100とした場合の種類別の販売台数をみると、昨年は安い一般車が売れなくなる一方で高い自転車(スポーツバイク・電動自転車)が売れたことがわかります。

総務省統計局が実施している小売物価統計調査によると、今年10月の自転車1台あたりの平均価格は普通自転車が4万294円、電動自転車が11万4282円です。15年と比べると普通自転車が約5000円、電動自転車が1万円ほど上がりました。

高い自転車が売れている背景にあるのが、「職」と「食」の2つの「ショク」です。「職」はコロナ禍による通勤手段の変化です。電車やバスなどの移動を避け、自動車で通勤する人が増えました。「食」はウーバーイーツに代表される料理宅配サービスの普及です。運搬手段として自転車を使う運び手が多く、業務的に使うことが増えたため実用性が重視されるようになりました。

20年の自転車の国内販売台数はコロナ前の19年に比べ減少しました。需要に対して生産が追い付かなったためです。工場の停止、原料や部品を運ぶコンテナ船の不足でサプライチェーンが混乱したことによる影響です。そのため、自転車メーカーでは生産が滞り販売台数が減ってしまいました。ロードバイクなどの高級自転車を取り扱っているメーカーでは、納期が1年以上遅れているケースもあるようです。

きょうの値段の方程式です。

自転車の値上げ=
資源不足を受けた単価の上昇+2つの「ショク」による需要の変化

供給不足改善の動きも

今後はどうなるでしょうか。部品では、供給不足を改善するための動きが出ています。高価なレース用自転車のギアとブレーキで世界シェアの65%を握る、自動車部品大手のシマノ。同社は全世界の生産拠点で、今年12月期の生産量をコロナ前の19年12月期に比べて金額ベースで5割引き上げると発表しています。来年にもシンガポールで新工場が稼働し、需要に見合った供給能力を確保しようとしています。

ただ、今後も自転車の価格は上がりそうです。有力な製造拠点の中国と台湾はどちらも人件費が高騰し、日本ではガソリン高もあって経済的な乗り物として自転車に注目が集まっています。お店によっては1台1万円もしない自転車が売られていますが、あまりにも安いものは安全性に疑問の声が上がっています。自転車が絡む事故も増えており、安全面で「価格より品質を重視する」という消費者も増えそうです。

(BSテレ東「日経モーニングプラスFT」コメンテーター 村野孝直)

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。