脱炭素で注目!太陽光発電 中古品が人気の理由は
世界各国が脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーに力を入れています。日本で先行するのが太陽光や風力発電で、なかでも太陽光発電の導入量が伸びています。太陽光など再エネで作った電力を電力会社が一定期間固定価格で買い取る「FIT制度」が始まったのが2012年度。資源エネルギー庁によると、太陽光発電の導入量は12年度に比べ2019年度は6倍、住宅用だけでも2倍になっています。
この規模は米国や中国に続き世界3位の規模です。最近では電力料金が毎月上がっており、「電気を自給自足で安く」というニーズも強まっています。中古市場も活況のようです。
住宅用のコストは低下
住宅用の太陽光発電の導入コストは下がっています。一般的な規模の4キロワットで70万~80万円。4人世帯の電力を自給自足できて、売電で収入を得ることができる発電量です。材料の値段も下がっており、特にパネル価格は現在1ワットあたり25セントと17年に比べ4割安です。20年の夏にパネル原料のシリコンを製造する中国の工場で爆発事故が相次ぎ発生し、21年には中国全土における電力不足でパネルが供給不足となり一時的に値段が上がりました。しかし、直近では再び下げに転じています。
補助制度を設けている自治体も多く、住宅への設備設置がしやすくなっています。使用電力のうち再エネの割合を30年までに50%にする目標を掲げている東京都の小池百合子知事は昨年、都内の新築住宅への設置義務化を検討すると発表しました。発電設備がかなり安くなったこともあり、補助の対象が太陽光の電気を蓄える蓄電池にシフトしているのも最近の傾向です。
一方、規模の大きい事業用の発電設備は新設が減っていて、既設(中古)の取引量が増えています。太陽光発電の見積もりサイトを運営するグッドフェローズ(東京・品川)によると売却依頼件数は21年で335件と、この3年で約6倍になっています。新設するための適地が少なくなっていることに加えて、固定買い取り価格が毎年下がっているので新設のメリットが薄れていることが理由です。そこで、過去の高い水準で買い取り価格が固定されている「中古」の売買が盛り上がっています。
「中古」の利回り10%に
FIT制度では事業用の太陽光の電気は20年間、固定価格で買い取ってくれます。ただ、21年度の買い取り価格は12円(10~15キロワット)と、12年度に比べ半分以下の価格になっています。つまり2012年度に発電を始めた太陽光発電なら、今建設するものに比べ3倍以上高い値段で売ることができるのです。中古売買を仲介するサイトでは、平均的な価格が50キロワットで1500万〜2000万円。利回りは約10%だそうです。
きょうの値段の方程式です。
太陽光発電は日照時間が少なくて十分な量の発電ができなかったり、精密機器なので壊れたりするリスクがあります。既に稼働している中古の場合、これまでの発電実績のデータがあり、今後の発電量見通しも大きな誤差がないそうです。
ただ、修理・メンテナンス費用、災害などに備えて保険への加入も考えなければならないなど費用負担が発生することもあります。一般的に25~30年とされる発電パネルの寿命が終わった後の廃棄費用については、今年から積立制度が始まります。設置後10年たったものから毎年積立金を支払う必要があります。
買い取り価格、4月から新制度
発電で余った電力の買い取り価格については、今年4月からは新しい制度が始まります。「FIP制度」です。FITのように固定価格で買い取るのではなく、発電事業者が電力の卸市場で売電した際に市場価格に一定のプレミアムを上乗せして買い取る制度です。
普及を促すため買い取り価格に「優遇措置」を設けてきた太陽光など再エネですが、これからは特別扱いせず電力全体の需給に合わせた価格体系にシフトしていきます。こういった点からも太陽光発電の普及ぶりがうかがえます。
(BSテレ東「日経モーニングプラスFT」コメンテーター 村野孝直)
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
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