ガソリン3年ぶり高値 日本特有の事情響きなお上昇か
ガソリン価格が上がっています。10月6日に資源エネルギー庁が発表した4日時点の全国の平均販売価格(レギュラー)は1リットル160円になりました。5週連続の値上がりで、160円台に乗せたのは3年ぶりです。
OPECプラス、減産の手緩めず
より市場価格を反映するとされる「ガソリン価格比較サイト gogo.gs(ゴーゴージーエス)」でも155円台。こちらも上がっています。長く続いたコロナ禍もワクチン普及でようやく出口が見え始めました。外出自粛から以前のような生活を取り戻そうとする中でのガソリン高。いつまで続くのでしょうか。
ガソリンが高くなっている理由は主に3つあります。①原油高②元売りの統合・再編③ガソリンスタンド減少です。まずは原油高について。昨年、コロナによる需要減を受け、OPEC加盟国と非加盟国のロシアやメキシコなどで構成するOPECプラスは原油の減産を始めました。今年に入り、ワクチン接種も広がり経済回復がすすんで原油の需要が回復してきましたが、OPECプラスはまだ減産の手を緩めていません。原油の国際価格は一時7年ぶりの高値水準をつけています。
元売り統合・再編で競争原理働きにくく
原油高は世界共通の理由ですが、2番目の元売りの統合・再編、3番目のスタンドの減少が日本特有の事情です。かつて20社ほどあった石油元売り会社が過当競争体質を改善するため統合や再編をすすめてきました。現在では5社になりました。ENEOSと出光興産の上位2社でシェアは8割となり、以前に比べると競争原理が働きにくくなりました。
ガソリンスタンドも減っています。資源エネルギー庁によると1994年度をピークに右肩下がり。2019年度末時点で2万9637カ所とピーク時に比べ半減したそうです。今後も減少が見込まれています。さらに自動車の燃費性能は年々向上しています。2000年と2020年とも新車販売台数トップ5に入っているトヨタ自動車の「カローラ」で比較すると約2倍向上しています。軽自動車の普及もあり国内のガソリン販売量は2004年以降減少しています。
「薄利多売」から「利益重視」に転換
かつてのスタンドの経営方針は「薄利多売」でした。近くのライバル店よりも1円でも安く売ってでも量をさばいていれば経営が成り立っていました。ところが、仕入れ値は元売りの再編で下がりにくくなっている現状で、なおかつ全体の需要が減っている中では「多売」も難しくなりました。こういった市場の変化を受けて、スタンドを経営する販売会社も「利益重視」の姿勢に転じています。
石油元売りの統合・再編、ガソリンスタンドの減少によって販売方法が「利益重視」に変わったことで、原油高はそのまま製品であるガソリンの価格に反映しやすくなり、下げ局面だとしても下がりにくい構図になっています。きょうの方程式は「ガソリンの高止まり=販売各社の『薄利多売』から『価格重視』への転換を反映」となります。
緊急事態宣言も解除され、今後は旅行も上向くでしょう。ガソリンの値上がりはドライバーにとっては頭の痛いところです。今後はどうなるでしょうか。残念ながら当面は上がるとみられています。ガソリン高が一服するには原油価格が下落するか、円高が進行するかのどちらか、もしくは両方の条件が必要になりますが、2つともいい要因がありません。ニッセイ基礎研究所の上野剛志さんは、「当面上昇基調が続きそうで、年内に全国平均で170円まで上昇する可能性がある」とみています。
(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
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