リスク負い収益は還元
「自らリスクを負い成功することができれば、ホールなどから依頼された公演よりも収益ははるかに大きくなります。その収益を自分自身や所属アーティストに還元し、そのお金で海外に行って勉強すればさらに上手になる。彼、彼女らがまた帰ってくれば、日本の音楽界全体の質は確実に上がっていきます」
「音楽に限らず日本では一つの事に専念すべきだという考えが主流です。だけど欧州に行って驚いたのが『豊かに暮らしたいから』と言ってダブルワークする人の多さでした。ピアノさえ弾ければ十分、経営的なことは考えたくないという人がいれば、それはすてきな個性です。だけど少しでも自分で公演を開いてみたい、挑戦してみたい、という気持ちがあれば一歩踏み出すべきです。ダメだったら次はやめれば良いんです」
――事務所経営者としての苦労はありますか。
「マネジメント側の人材確保です。ポップスやロックのライブに行ったことはあっても、クラシックコンサートに行ったことがある人は少ないでしょう。ましてやその裏方に進みたい人なんてごく少数です。アーティストマネジメントにおいて理想とするのは、優秀なホテルマンのような人です。彼、彼女たちは『なんでそんなところに気がつくの』っていうぐらい先回りしてもてなしてくれます。そんなふうに演奏家を良い気分でステージに送り出してくれる人は、とても大事な存在です」
(西原幹喜)
■ショパン・コンクール2位
そりた・きょうへい 1994年生まれ。桐朋女子高校音楽科在学中の2012年、日本音楽コンクール第1位。モスクワ音楽院を経てワルシャワのショパン国立音楽大へ留学。18年音楽事務所「NEXUS」設立。21年に「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」を株式会社化。同年のショパン国際ピアノ・コンクール第2位。
7月に初の自伝エッセー「終止符のない人生」(幻冬舎)を刊行した。小中学校の後輩である編集者と何度も校正し、思い入れのある一冊になったという。
そりた・きょうへい 1994年生まれ。桐朋女子高校音楽科在学中の2012年、日本音楽コンクール第1位。モスクワ音楽院を経てワルシャワのショパン国立音楽大へ留学。18年音楽事務所「NEXUS」設立。21年に「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」を株式会社化。同年のショパン国際ピアノ・コンクール第2位。
7月に初の自伝エッセー「終止符のない人生」(幻冬舎)を刊行した。小中学校の後輩である編集者と何度も校正し、思い入れのある一冊になったという。
■お薦めの本
「外套・鼻」(ゴーゴリ著)
モスクワ音楽院に留学した際に手にとり、ブラックユーモアに引き込まれました。ラフマニノフらの作品を演奏する際にも生きています。「ゴーゴリ博物館」の近くにも住んでいました。
「外套・鼻」(ゴーゴリ著)
モスクワ音楽院に留学した際に手にとり、ブラックユーモアに引き込まれました。ラフマニノフらの作品を演奏する際にも生きています。「ゴーゴリ博物館」の近くにも住んでいました。
[日本経済新聞夕刊 2022年7月28日付]