インドで改めて自分を見つめ直した。「子供の頃から電子工作などの技術が好きだった。やはりテクノロジーを追究しよう」と2年半で会社を売却し、帰国した。その後1年余りは「ニートエンジニア」になった。1人で仮想現実(VR)アプリなどを次々に開発し、IT開発者らが腕を競う技術コンテスト「ハッカソン」に出場した。「有能なエンジニアとして高い評価を受け、計100万円ぐらいの賞金を稼いだ。そこで多くの投資家と出会い、起業を促された」と話す。16年にギタイを1人で設立した。

「日本のイーロン・マスク」になれるか

ロボット開発も自前で始めた。インターネット上にはロボット関係の大量のデータが存在する。「理系の大学院に行かなくても、ロボット開発のノウハウをネットで学習できる」と自身でプロトタイプ(試作品)5号機まで開発した。介護用、災害用、原子力発電所用など自律型の汎用ロボットには無限の可能性がある。しかし、地上でロボットを操作する場合、安全上の様々な制約がかかる。しかもロボット製造には大量のセンサーや高額モーターが必要なため、低コスト化や量産化の壁が厚いことに気づいた。

そんな時、米シリコンバレーでの3カ月間の教育プログラムに参加する機会があった。ハッカソンなどで活躍していたおかげで、日本を代表する次世代のデジタル人材として選ばれた。ここでNASAなどの宇宙関係者と出会い、宇宙関連のロボット市場の可能性を知った。「地上ではなく宇宙、量産化ではなく高単価一点ものならマーケットは成り立つ」と判断。優秀な技術者をどんどん集め、宇宙向けロボット開発に注力した。

中央の青いシャツが中西さん

ギタイの社員は現在22人で、このうち17人が技術者。さらに7人がJSK出身だ。ISSなどの宇宙用作業ロボットのほか、宇宙ごみ回収や月面探査関連のロボット開発にも取り組む。経済産業省のほか、米国や日本の大手メーカーなどから次々に受注が舞い込み、「人手が足りず、困っている状態」。今やギタイは日米の投資家の間で次代のユニコーンとして注目されるロボットベンチャーになった。

ギタイはビジネスの発見力に優れた中ノ瀬さんと国内トップのロボットエンジニアがドッキングした革新的なベンチャー企業と言える。中ノ瀬さんは「日本人は『心理的な壁』をつくる人が少なくない。インドで起業なんて無理。理系でもないのにロボット開発なんて無理。宇宙ビジネスなんてそもそも無理。しかし、今はグローバル化、デジタル化の時代で、無限の可能性が広がっている。やってみれば意外と難しくない」と話す。尊敬するのはスペースXや米テスラを創業したイーロン・マスク氏。民間では無理と言われた宇宙ビジネスに果敢に挑戦して大きな成果を上げている。希代の起業家に「無理という言葉はない」。中ノ瀬さんは「日本のイーロン・マスク」と呼ばれる存在になれるのか。ギタイの挑戦は始まったばかりだ。

(代慶達也)