2021/10/26

「90年代、労働党が野党のときに、どうすれば支持率が上がるのかについて調査しました。多くの女性は『女性が直面する課題を理解していない』という理由で労働党に投票しないことが判明しました。結果として当時のトニー・ブレア党首は女性候補者数を増やしました」

「保守党には『Women 2 Win(ウィミン・トゥー・ウィン)』という、女性候補者をトレーニングし、政治参加に結びつくツールを提供する支援組織もあります。英国の政党は、女性候補を立てることが自分たちの党勢拡大、選挙での勝利といった利益に結びつくことがわかったのです」

日本の衆院に占める女性議員の割合は、これまで最高でも10%程度だ。内閣府によれば、女性が立候補を断念した理由として男性より目立ったのは「自分の力量に自信が持てない」「当選した場合、家庭生活との両立が難しい」だった。
駐日英国大使のジュリア・ロングボトム氏(東京都千代田区)

ロングボトム「日本では女性への社会的な期待、規範が課題の一つになっていると感じます。だからこそ、もっと多くの女性が政治家になる必要があるのです。そうすれば若い女性も自分の将来像として、権力・影響力を持つ女性を目にすることができます」

「日本では政治家を含むすべての職業の労働環境を見直す必要があると思います。ノルウェーの初代女性首相が指摘したように、保育園がなかったり、親自身が仕事を続けるのが不可能なほど労働時間が長かったりすると、誰にとっても厳しい状況です」

「ジェンダーとは女性だけを意味するのではありません。すべての人を意味します。カップルが男女であろうと、女性2人であろうと、男性2人であろうと、性別をはっきりさせたくない人であろうと、家庭と仕事を両立できるような働き方を実現することは、社会にとって重要です」

ニーハマル「心から同意します。構造的な問題が女性の労働参加の障害となっています。保育園の不足や男女に共通する長時間労働に加えて、現行の税制が抱える問題は働きたい女性を落胆させています。しかし、これらの問題は改善できます。日本の女性は『何を変えたいのか、何を達成したいのか』と自問すべきです。女性が男性に代表されることに満足しなければ、女性自身が指導者や政党に問題と解決策の両方を指摘できるはずです」

「また、政治家が『男女共同参画に賛成だ』と言うたびに『それを促進するために何をしているのか』と問われるべきです。ジェンダー平等に真の前進をもたらすのは具体的な行動です」

■女性活躍 掛け声だけで終わらせない
両大使は繰り返し「政治とはその国の社会状況の映し鏡だ」と語った。「いつか男性だけに代表されることに耐えられなくなる人が増えるのではないか」という指摘もあったが、女性にとっては身近な困りごとへの具体的な政策が見えず、政治への距離が遠ざかるといった悪循環が起きている気がしてならない。

 ウプサラ大学助教授で政治経済学を専門とする奥山陽子氏は「女性議員の増加は政策の優先順位、立法活動に影響を与える」と海外の事例を踏まえて指摘する。女性議員は子育て政策や医療、健康に関わる分野に着目するという。そのうえで奥山氏は「民主主義は、全市民が参加するときに最もうまく機能する」と説く。日本では「女性活躍」が唱えられて久しいが、掛け声だけに終わらせない時が来ている。
(山下美菜子)

[日本経済新聞朝刊2021年10月25日付]