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2021年4月から文化庁長官を務める作曲家の都倉俊一さん(74)は日本音楽著作権協会(JASRAC)会長として著作権意識が薄いとされる中国への啓発活動に取り組み、16年にはアジア初の音楽創作者団体、アジア・太平洋音楽創作者連盟(APMA)を旗揚げした。「情熱と誠実さで人を説得する」という信念が原動力になった。

――初代会長を務めたAPMAの調整役として困難をどのように乗り切りましたか。

「きっかけはJASRAC会長時代の14年。世界組織、国際音楽創作者評議会(CIAM)の会長から『アジアには著作権制度が未整備な空白が多いので地域組織を立ち上げてほしい』と依頼されたんです。カギは中国の理解をどう得るか。難航しましたが、交渉の末、中国人の作家に理事になってもらう了承を取り付け、APMAの発足にようやくこぎ着けました」

「決め手となったのは、顔を見合わせて粘り強く続けた話し合いの成果です。熱心に説くうちに相手の胸襟も次第に開き、強い信頼関係が生まれる。歴史認識や政治対立など難しい問題はありましたが、何とかそれを突破できた。やはり同じアジア人同士。誠実な気持ちや情熱は相手にジワリと伝わるものです。子どもの頃から海外生活で色々ともまれてきた自分の体験をうまく生かせた気がします」

――日本だけに課されていた著作権の「戦時加算」の解消にも尽力されましたね。

「これも人間関係の構築が大きかったですね。サンフランシスコ講和条約で日本は戦勝国である連合国の作品に限り、著作権の保護期間を最大10年加算することが義務付けられていました。でもドイツやイタリアにこの義務はない。日本だけに課された不平等な規定です。『このままでは戦争は終わらない』と07年にベルギーで開催された国際会議で条約締結国に対して権利行使の自粛を訴え、満場一致で合意を得ました。議論の後も関係者と杯を酌み交わし、時間をかけて交流を深めた結果だと自負しています」

文化庁長官・作曲家 都倉俊一氏

文化庁長官・作曲家 都倉俊一氏

――取り組んできた任務はまさに民間外交官ですね。

「日本人は自国にもっと自信を持っていいと思うんです。そもそも謙虚な国民性だし、自己主張するのが苦手。もちろん謙譲の美徳という価値観もありますが、卑屈すぎると思える場面も少なくありません。でも日本人が考える以上に海外から日本への期待は強い。近代化や戦後復興を成し遂げた日本にまだまだ憧れのまなざしを注いでいる」

「日本人が交渉下手なのは教育にも責任の一端がある気がします。軍部主導で太平洋戦争に突入したプロセスについて学校で議論したり考えたりする機会が極めて少ない。これではリーダーがなかなか生まれにくいですよね」

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