日経産業新聞

三井化学は本選考やインターンの選考で録画形式を取り入れている。これまでの選考で技術系には「専門外の人にもわかるような研究内容の説明」を、事務系には「あなたらしさを表すエピソード」を動画で提出させた。人事部の櫨山義裕採用チームリーダーは「物事をわかりやすく相手に伝えることができるか」などの点を評価したと狙いを明かす。

「顧客が化学に詳しいとは限らない。社内でも化学分野だけでなく、機械や電機の知識を持つ社員もいるため、バックグラウンドが異なる相手にもわかりやすく伝える力が求められる」と説明する。必須となる能力を評価した上で内定を出すことで、入社後のミスマッチの防止にもつなげる考えだ。

櫨山氏は就活生に「自撮り」ではなく誰かに撮影してもらうことを勧めている。「自分のことを良く知る友人などに、自分らしさが伝わる動画になっているかフィードバックをもらうとよいのではないか」と助言した。

「取締役にタメ口」

TikTokで話題となったリソースクリエイションの「タメ口シリーズ」

SNS(交流サイト)を使って認知度を高めた企業も現れた。求人広告代理店のリソースクリエイション(東京・文京)は21年4月から、動画投稿アプリ「TikTok」を使った採用PR活動を本格化した。奔放な内容が話題となり、22年卒では5人の募集人数に対して530人以上が選考を申し込んだ。

中でも「取締役にタメ口使ってみた」と題された動画は、8000超の「いいね」が付いた。SNSの運用を担当する西川唯香氏は、就活生以外もターゲットに入れて動画を投稿していると話す。「TikTokはユーザーの年齢層が低い。近い将来に就活生になる中高生にもアプローチしている」(西川氏)

企業のPR動画を制作してSNSなどで配信するNewsTV(東京・港)には、採用活動向けに動画を作りたいという問い合わせが相次ぐ。同社ではユーザーが動画の視聴をやめるタイミングを分析しており、就活生がスマホで再生した際に途中で離脱しないように若い社員を出演させるなどの工夫を重ねている。

NewsTVの杉浦健太代表取締役は「この20年で新卒採用を実施する会社のほとんどがホームページを持つようになったように、5年後には採用で動画を活用しない企業は無くなる」と予想する。「今の就活生より若い世代にとって、動画で情報を取得するのは当たり前のことだ。彼らに『仕事のやりがい』を文字で並べても伝わらないのではないか」と指摘した。

TDKの井上氏は学生を飽きさせないインパクトを求めた結果、ミュージカルにたどり着いたと話す。従来のブランディングからは一線を画した内容となったが「ここまで振り切らないと学生には響かないだろう」と考えて動画を公開した。「新型コロナの影響で来社しにくい状態が続くなかで、動画を通じてどのように企業を印象づけるかが今後も大事になる」(井上氏)

TDKの動画は広報が企画し、人事が制作に協力した。右から広報グループの井上氏、人事部の加賀谷氏、今関桃香氏

動画の活用が企業と学生の間の溝を埋める手段として広がるなか、新型コロナの収束が見通せない現状に対応する柔軟性が就活生にも求められている。変化に取り残されないことが、効率的で相互の理解度が高い就活につながる。

(赤堀弘樹)

[日経産業新聞 2021年9月22日付]

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