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日経 X woman

2014年に「勉強会」という形で始まったアステラス製薬の若手有志団体「A2」。「A」はアステラス製薬の頭文字ではなく、「Amplify our Ambition(個の思いを実現させる)」に由来している。「部署や年代を問わずに共通の思いを持った仲間が集まり、誰に対しても自分の考えや気持ちを発言できる心理的安全性が担保されたプラットフォーム」というA2の活動について、共同代表の西浜秀美さんと村上貴之さん、メンバーの中井利恵さんに聞いた。

魅力的な仲間との対話を通して、視座を高めたい

05年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し、誕生したアステラス製薬。がんや泌尿器分野の薬品開発に強みを持ち、売り上げで国内第2位の製薬会社として業界をけん引する立場だ。だが、A2の共同代表、村上貴之さんによると「製薬業界のスペシャリストとして目の前の仕事に集中する一方、他部門の業務や他業界の動き、10年後、20年後に世の中の流れはどう変わっていくのか、といったことに目を向ける機会が少なくなりがち」なのだという。

「目の前の仕事をこなしているだけでは、会社員人生の中で経験できることは限られてしまいます。それならば『会社員』という限られた時間の中で、魅力的な仲間とつながり、幅広く対話することで、さまざまな部門での業務内容や楽しさ、悩みなどを追体験し、視座を高めたいという思いが、A2の活動の根底にあります」(村上さん)

A2共同代表の村上貴之さん(左)と14年入社の中井利恵さん(右)

A2共同代表の村上貴之さん(左)と14年入社の中井利恵さん(右)

A2のもう一人の共同代表は西浜秀美さん。西浜さんは08年、アステラス製薬に入社。営業職(MR)、人材開発部、事業開発部を経て、18年からNew Product Planning, Commercial Strategy に異動し、グローバルにおける新製品マーケティングを担当している。

A2を発起人の1人として立ち上げたのは、14年に本社の人材開発部に異動したタイミングだった。

「現場でMRや研究をしていた社員が本社異動になると、これまでとは異なる仕事の考え方や進め方にとまどうこともあります。その不安を解消する意味でも、当時は異動した際に部門横断の社内研修がありました。その中で、私自身も初めて『社内にはこんなに多様な考え方を持った人たちがいるんだ』『違う部署の人と話すと自分の視野も広がるし、仕事を進める上でも大きな意義がある』と実感しました」(西浜さん)

A2共同代表の西浜秀美さん。取材日は海外出張中のため、オンラインでの参加となった

A2共同代表の西浜秀美さん。取材日は海外出張中のため、オンラインでの参加となった

オーソドックスな勉強会から巻き込み型に

A2は部門横断の社内研修で出会った仲間たちが「もっと社内の魅力的な仲間たちとつながりたい」と意気投合した結果、「勉強会」という形でスタートした。

最初は幹事役を設け、月に1回、10数人程度のメンバーで部門紹介をしたり、仕事術を学んだりという「オーソドックスな勉強会」だったという。

しかし、回を重ねるごとに、あえて本業ど真ん中ではなくともビジネスパーソンとして知っておくべき知識を身に付けるため、幅広く「巻き込み型のプログラム」を開催するように。例えばSDGs(持続可能な開発目標)の専門家を呼んで情報をキャッチアップしたり、日本橋に拠点のある企業とともにSDGsについてカードゲームで学んだりした。

A2の活動を続ける中で、社内の仲間がそれぞれの夢や思いを持っていることも分かった。そうした「個の思い」を達成することが、A2のビジョンである「アステラス製薬の価値向上を通じて社会に貢献する」につながると強く感じたことから、A2の存在意義も「個の思いを実現するためのプラットフォーム」へと変わってきた。

「アステラス製薬は人の命に関わる医薬品を扱う会社ですから、やはり社員一人ひとりも人の役に立ちたい、社会に貢献したいという思いを持っています。それが自分自身の本業であろうと、本業以外のところであろうと、アステラス製薬を通して自分の『Will』を達成する場としてA2があります。そして、達成した喜びをメンバーと分かち合うことで『自分にもできるはず』というポジティブな連鎖を生み出しています」(村上さん)

村上貴之さん。08年、アステラス製薬に入社。営業本部(MR)、開発本部を経て、現在はCFP&A部門にて新薬開発プロジェクトのポートフォリオ管理などに携わる

村上貴之さん。08年、アステラス製薬に入社。営業本部(MR)、開発本部を経て、現在はCFP&A部門にて新薬開発プロジェクトのポートフォリオ管理などに携わる

「中には自分のWillを持ちながらもどうしたらいいか分からない、その勇気が持てないというメンバーもいます。でも、A2ではとにかく一歩動きだすことが楽しい、それが称賛されることが当たり前という土壌をつくりだしています。心理的安全性が担保されたプラットフォームなんです」(西浜さん)

継続的な活動のため、新入社員をはじめとした若手社員にも積極的に声をかけているのもA2の特徴だ。

中井利恵さんは14年入社。開発本部で治験マネジメントなどに携わり、A2には17年から参加した。

「社外取締役(17年当時)だった岡島悦子さんの『40歳が社長になる日』という著書に関するA2主催の講演会に誘われたのが最初でした。それまで開発本部の若手だけで勉強会をすることもあったのですが、そちらは専門性を深めていくもの。でも、A2の活動はクロスファンクショナル(部門横断的)で、いろんな視点を持った人、情熱的な人がいて刺激的でした。社内にこんなグループがあるんだと驚きでした」(中井さん)

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